鰻の成瀬のフランチャイズが店舗拡大!人気の理由や強み・将来を分析します
わずか2年足らずで200店舗を突破し、業界に旋風を巻き起こしている「鰻の成瀬」。従来の半額以下の価格で本格的な鰻が味わえるこのチェーン店は、どのようにして急成長を遂げたのでしょうか。そして、この「鰻の成瀬ブーム」は一過性のものなのか、それとも外食業界の新たな常識となるのでしょうか。フランチャイズWEBリポートでの執筆実績がある筆者が分析します。
鰻の成瀬とは?概要やメニューをおさらい
「鰻の成瀬」は2022年9月、フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社(以下、FBI)によって誕生した飲食店のフランチャイズです。FBIは元々、フランチャイズ本部の支援を行なうコンサルティング会社ですが、自らがフランチャイズチェーンを運営することで、より実践的な知見を得ることを目指し、「鰻の成瀬」を立ち上げました。
「鰻の成瀬」最大の特徴はリーズナブルな価格設定。従来の鰻専門店の約半額という驚きの価格で提供しているにもかかわらず、味や品質は妥協せず「うまい鰻を腹いっぱい!」のコンセプトを体現しています。
鰻の成瀬のメニュー
「鰻の成瀬」では、メニューを鰻に絞ることで、調理の効率化と在庫管理の簡素化を実現しています。主なメニューは下記のとおりです。
ランク | 梅 | 竹 | 松 |
---|---|---|---|
並 | 1,600円 | 2,200円 | 2,600円 |
上 | 1,900円 | 2,500円 | 2,900円 |
特上 | 3,400円 | 4,000円 | 4,400円 |
飲み物:瓶ビール/冷酒/ノンアルコールビール
端的にいえば鰻と飲み物だけのこのメニュー。これにも、「フランチャイズ本部のコンサルタント」が立ち上げたからこその戦略が隠れています。
まず、限られたメニューを提供することで、調理プロセスや提供のオペレーションを簡略化し、教育コストの削減とスピーディーな提供を可能にしています。さらに、取り扱う食材も最小限なので、在庫を効率的に消化しやすく、管理コストの削減や廃棄問題も改善。また、メニュー数を絞ることで注文までの時間を短縮し、回転率を上げるといった狙いもあると考えられます。
鰻の成瀬が店舗を急拡大させられる理由
「鰻の成瀬」の急速な店舗拡大は、外食産業に携わる多くの人々の注目を集めました。1号店のオープンからわずか2年足らずで200店舗にまで成長した背景には、いくつかの重要なアプローチがあります。ここでは、その主な理由を分析していきましょう!
【理由1】職人不要だから飲食経験ゼロでもオープン可能
鰻は「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」という格言があるように、専門的で難しい調理を求められる食材です。「鰻の成瀬」では、熟練の職人を必要としない効率的な調理システムを導入し、飲食経験のない人でも美味しい蒲焼を提供できるようにしています。
まず大量に鰻を仕入れ、加工場(セントラルキッチン)で蒲焼を製造。冷凍パックにして各店舗に配送します。鰻の調理工程でもとくに難しい「裂き8年」の作業を加工場で終わらせてしまうのです。
店舗に配送された蒲焼は、注文を受けてから専用の機械で蒸します。この機械は「鰻の成瀬」の特注品で、内部構造は各種メディアにも絶対に映さないこだわり。関東風の蒸し調理をベースにフワフワな食感を生みつつ、表面はサクッと仕上げるのが特徴です。
店舗でやることといえば、鰻を蒸し器に入れて盛り付けるだけ。非常に簡単な調理工程となっており、誰でも一定の品質の鰻を提供できるようにしています。熟練の職人を必要としないため、アルバイトスタッフだけでも店舗運営が可能です。これは人材確保の面でも大きなメリットとなっており、店舗の急拡大に大きく寄与しています。
【理由2】三等立地でも売上確保「目的食」という考え方
「鰻の成瀬」は、あえて一等立地を避け、二等~三等立地に出店する戦略を取っています。それを可能にしているのが、鰻が「目的食」であることです。目的食とは、食べたいと思って探し、比較的遠くのお店にでも足を運んで食べるような料理のことです。目的食を提供する飲食店であれば、必ずしも人通りの多い一等立地に開業する必要がないのです。
従来、飲食店、とりわけチェーン店は人通りの多い一等立地での開業がセオリーです。しかし、一等立地はどうしても契約費用や家賃が高額になってしまいます。「鰻の成瀬」が開業するような二等~三等立地であれば、開業時の初期投資や長期的な家賃負担も抑えられます。そのため、大小さまざまな企業が参入しやすく、早期の店舗拡大ができるのです。
【理由3】居抜き物件でもOK!開業コストの低さ
開業コストが低いのも、「鰻の成瀬」が急拡大した理由の1つです。
鰻の蒲焼は、炭火を起こしたり鰻を炙ったりするときに、多くの煙が発生します。そのため、鰻屋は基本的に「重飲食」用の物件でしか開業できません。重飲食とは、煙や熱・油汚れが多く発生するような飲食業態のことを指します。たとえば、居酒屋や焼肉屋なども重飲食です。
一方、「鰻の成瀬」では、専用の蒸し器を使用するため煙などがほとんど発生せず、カフェやバーと同じ「軽飲食」用の物件で開業可能。重飲食の物件よりも物件の選択肢が広く、より早期に、かつ低い費用で物件を確保できます。
さらに、幅広い物件で開業できるため居抜きもしやすく、より開業費用を抑えることができるのです。
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鰻の成瀬に加盟する方法
「鰻の成瀬」は、ほかの多くのフランチャイズチェーンとは異なり、積極的な加盟店募集を行なっていません。代わりに、興味を持った個人や事業者からの問い合わせを待つという独特の戦略を取っています。だからこそ、「鰻の成瀬」の加盟店は高いモチベーションを持っており、本部とも強い信頼関係を構築できるのです。
加盟までの流れは下記のとおりです。
①公式ホームページの問い合わせフォームから連絡
②加盟意欲を明確に伝える
③本部からの説明を受け具体的に検討する
④相互の合意のもと加盟手続きを進める
業界内外から注目を集める「鰻の成瀬」。積極的な募集をしていない状況ながら、真剣に加盟を考えている方からの問い合わせが殺到しているようです。もし本気で「鰻の成瀬」の開業を考えている方は、問い合わせの時点で本部に自身の熱量を伝える必要があるでしょう。
鰻の成瀬の初期費用目安
「鰻の成瀬」のフランチャイズ加盟に必要な初期投資の総額は、居抜き物件の場合おおよそ700〜800万円程度です。これは、客席ありの飲食フランチャイズとしては、低い部類の初期投資額といえるでしょう。この金額には、加盟金や保証金、研修費・開業サポート費・専用機材の費用、そして物件取得費が含まれています。
初期投資の内訳は下記のとおりです(税抜)。
項目 | 金額 |
---|---|
加盟金 | 150万円 |
保証金 | 50万円 |
研修費 | 40万円 |
開業サポート費 | 50万円 |
専用機材 | 約100万円 |
内外装工事費 | 物件による |
鰻の成瀬の収益モデル
「鰻の成瀬」の平均的な店舗の月商は約400万円です。これは、1日6時間営業(昼3時間、夜3時間)の標準的な店舗の見込み収益となっています。
具体的な収益モデルの内訳を下記に示します。
項目 | 内容 |
---|---|
月商 | 400万円 |
営業時間 | 1日6時間(昼3時間、夜3時間) |
原価率 | 40% |
人件費 | 20% |
家賃 | 10%以下 |
ロイヤリティ | 10万円 + 売上の4% |
営業利益率は15〜20%程度となるようです。月商400万円の店舗の場合、月の営業利益は60〜80万円ほど。年間で考えると、単純計算で720〜960万円の営業利益となり、初期投資額(700〜800万円程度)を1年ほどで回収できる計算になります。
「鰻の成瀬ブーム」はいつまで続くの?
外食産業において、一時的なブームに終わるフランチャイズと、長期的に成功を収めるフランチャイズの違いは何でしょうか。「鰻の成瀬」の急速な成長を目の当たりにし、多くの人がこの疑問を抱いているはずです。ここでは、「鰻の成瀬」の将来性について、過去の事例を参考にしながら考察していきます。
過去のブームを振り返る
外食産業の歴史を振り返ると、「高級食パン」「タピオカ」「スタミナ丼」など、一世を風靡しながらも、その後急速に勢いを失ったフランチャイズの例は少なくありません。そこで、過去のフランチャイズの事例から学べることを見ていきましょう。まず、高級食パンの代表格である「乃が美」の例を考えてみます。「乃が美」は一時期、大量出店と大量閉店が取りざたされましたが、現在では一定の店舗数を維持しています。その理由は、「高級食パンといえば乃が美」というブランドイメージを確立できたことにあります。ブーム時には日常的に購入されていた高級食パンですが、現在では主に「贈答用」や「特別な日の楽しみ」として位置づけられ、和菓子やケーキのように安定した需要を獲得しています。
一方で、スタミナ丼のブームは多くのブランドの共倒れという結果に終わりました。これは、需要に対して供給が過剰となり、各ブランドの差別化が困難になったことが主な要因だと考えられます。また、「スタミナ丼」というこれまでにない商材だったことも、流行が長続きしなかった理由でしょう。
次に、タピオカドリンクの代表格「ゴンチャ」の例を見てみましょう。ゴンチャはタピオカブームに乗って急速に店舗を拡大しましたが、ブームの終焉とともに一時的に苦戦しました。しかし、ブーム以前から持っていた「紅茶へのこだわり」が再評価されたことと、さらに「コーヒーを提供しない」という差別化戦略を打ち出すことで、再び注目を集めています。ブームに乗りつつも、自社の強みを見失わず、むしろそれを強化することが重要だということです。
鰻の成瀬の注目ポイント
これらの事例から、「鰻の成瀬」の将来を考えるうえでいくつかの重要なポイントが見えてきます。まず、鰻は日本人に昔から愛されてきた日本食だという点。そして、「鰻の成瀬」は現時点で鰻専門店のフランチャイズとして突出した知名度を誇っている点。さらに、「リーズナブルな価格で本格的な鰻が楽しめる」独自の価値という点です。
結論から言うと、「鰻の成瀬」が生き残るかはわかりません。しかし、これから増えるであろう競合との差別化や現実的な店舗展開、そして変わらない商品へのこだわりを継続できれば、長期的な成功を収める可能性は十分にあるといえるでしょう。今後の「鰻の成瀬」の動向に、引き続き注目していく価値は大いにあります。
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まとめ
いかがでしたか?「鰻の成瀬」の計算されたビジネスモデルは、日本の外食業界・フランチャイズ業界に新たな可能性を示しました。フランチャイズビジネスに興味のある方や、飲食業界の新たなトレンドに注目している方にとって、「鰻の成瀬」の事例は貴重な参考になるでしょう。今後の展開に、引き続き注目が集まることは間違いありません。
フランチャイズWEBリポートでは、さまざまな飲食フランチャイズをご紹介しているほか、開業ノウハウについても記事で解説しています。これらもぜひ参考にしてみてください。
大阪府堺市出身の編集者・ライター。これまで100以上のフランチャイズ関連コンテンツの制作に携わる。Webプログラミングや動画編集・SEO分析をはじめとした、幅広い業務経験を活かした記事制作が強み。既知のテーマに対して新しい視点を提供し、読み手が「ワクワクする」ようなコンテンツ作りを信条としている。