「お茶の文化を広げたい」伊右衛門カフェが描くフランチャイズ戦略と成長ビジョン
コーヒーチェーンが街にあふれるなか、「まずはお茶を飲もう」という提案で存在感を高めているブランドがあります。サントリーと福寿園が手がける「伊右衛門」の名を冠した「伊右衛門カフェ」です。2008年の京都1号店から始まり、現在はフランチャイズによる全国展開を加速中。
カフェ・カンパニー株式会社の福田祐一郎氏と菅淳雄氏にお話を伺いました。
サントリー×福寿園――20年のブランド力が生む安心感

やはりサントリーさんと福寿園さんが20年近くかけて育ててきた「伊右衛門」というブランドがあることが大きいですね。ブランドがすべてではありませんが、加盟店のオーナー様にとっても安心感につながります。
たとえば、日本でいくつかの大手コーヒーチェーンがあれだけの店舗数に成長したのは、どこに行っても安心して同じ価格・同じクオリティで楽しめるという信頼があったからだと思います。身近な例で言えば、自分の娘がアルバイトを始めるとき、聞いたこともないお店より「伊右衛門カフェで働いている」と言われた方が安心できる。そういう信頼感がこのブランドにはあります。
いま抹茶はインバウンド需要などで品薄が続いており、どのお茶屋さんでも仕入れが難しくなっています。しかし伊右衛門カフェは福寿園とのパイプがあるため、今後さらに相場が上がったとしても、品質の高い抹茶を比較的安定的に調達できる体制を整えています。
さらに、福寿園の厳選された茶葉を使っており、それらを抹茶だけでなく煎茶やほうじ茶にも横展開できるのが強みです。他の抹茶業態との違いは、お茶そのものが美味しいということ。抹茶に限らず「お茶の文化」を幅広く届けられるブランドだと自負しています。
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初期投資は1,000万円から。伊右衛門カフェの開業資金と収益力

フルスケルトンで商業施設にスタンド型で入る場合、加盟金や工事費・厨房機器などをすべて含めても約3,000万円でお釣りが来るくらいです。投資回収の目安は2.5〜3年を想定しています。
FL比率は全店平均で54%ほどです。内訳は原価が28%、人件費が26%となっています。しっかりとした食材を使いながらも、レシピやオペレーションをシンプルに設計しているため、アルバイトスタッフでも十分に対応できる仕組みになっています。その結果、見た目のクオリティは高いのに人件費を抑えられるという構造が実現できています。
仕入れ先にも頑張っていただいていて、原価の面でも優位性があります。飲食のフランチャイズを経験されている方がこの数字を見ると、「これならやりたい」とすぐに理解していただけることが多いですね。
伊右衛門カフェの加盟条件と求めるパートナー像

現時点では法人のお客様を中心にお付き合いさせていただいています。与信審査が入るため、個人での加盟はハードルが高いのが正直なところです。3ヶ年の決算書があり、データバンクで確認できるような一般的な法人であれば、審査自体はそこまで厳しくはありません。
また、お茶の文化を全国に広げていきたいという思いから、一社で複数店舗を展開していただける企業様とお付き合いしたいと考えています。
飲食のフランチャイズをすでに手がけている企業様が中心です。店舗運営やPL管理に慣れていらっしゃるので、出店のスピード感やコスト感覚を共有しやすいという利点があります。
飲食未経験の企業様の場合、原価率やFL計算などの基本をしっかり学んでいただく必要があるため、少し時間はかかります。ただ、そうした方にもきちんと対応しておりますので、ご興味があればまずはお声がけいただければと思います。
実店舗で学ぶ研修と、開業後も続く本部のサポート
まず本部での座学研修を2日間、計10時間ほど設けています。店長様はもちろん、加盟企業側の運営担当の方にもご参加いただきたいと考えています。
座学のあとは、実際に営業している川崎店や船橋店で実地研修を行います。研修センターでお客様役を相手にするのではなく、本物のお客様を相手にオペレーションを経験してもらうスタイルです。自分たちの店舗がオープンする前に実践を積めるので、安心して開業に臨めると思います。
店舗の引き渡しと同時に私たちも入り、アルバイトスタッフの指導を一緒に進めます。あくまで店長様がメインで指導にあたり、店舗をまとめていく形ですが、そのフォローアップとして本部のトレーナーを派遣します。オープン後も一週間ほどは帯同し、お任せできる状態になるまでしっかりサポートします。
想定以上にお客様が殺到して「もう一週間いてもらえませんか」というご要望にお応えしたこともありました。パッケージを渡して終わりではなく、一緒にお店を作っていくスタンスです。これから100店舗を目指していくうえで、加盟店様との関係性はとても大切にしています。
出店計画は3年で40店舗、5年で100店舗――「グリーンティーファースト」の未来

伊右衛門カフェは現在8店舗で、2026年4月24日には埼玉の越谷レイクタウンに新店舗がオープンし9店舗になります。直営とフランチャイズの比率は現在およそ半々ですが、今後はフランチャイズを8〜9割に引き上げていく方針です。京都と都内には直営店を出す計画もあります。伊右衛門カフェの始まりは2008年に京都・三条にオープンした伊右衛門サロンですから、原点である京都にはぜひ戻りたいと考えています。
出店目標は3年で40店舗、5年で100店舗です。最初の3年間は土台づくりの期間と位置づけており、加盟企業様が実力をつけ、「やってよかった」と実感できるよう、出店先は慎重に選定しています。ここで成功事例を積み重ねることで、その後は加盟企業様自身が店舗を増やしていく好循環を生み出したいと考えています。
特定の地域に限定する考えはなく、47都道府県すべてにお茶の文化を届けたいと思っています。ただし、最初の段階ではしっかりと売り上げが見込める立地を選び、成功モデルを作ることを優先しています。加盟店様に迷惑をかけないよう、数字を綿密にはじいたうえで出店を進めています。

「グリーンティーファースト」――まずはお茶を飲もう、というメッセージです。いまはコーヒーが中心の時代ですが、日本人にとってお茶はDNAに刻まれた馴染みのある存在です。また、お茶に含まれるテアニンという成分は、認知症予防につながる可能性があるとの研究報告もあり、いま注目を集めています。
サステナブルでウェルビーイングにもつながるお茶の文化を、もう一度広げていきたい。その中で利益もしっかり生まれる業態に仕上がっているのが、伊右衛門カフェです。
「一緒にお茶の文化を広げていきましょう」というのが一番伝えたいことです。フランチャイズは同じ志を共有するものだと思っています。お茶が好き、お茶を飲む時間が楽しい、そう共感してくださる方とぜひ一緒に取り組みたい。抹茶やお茶の業態はさまざまありますが、本物という点で伊右衛門カフェは一線を画していると自負しています。
もうひとつ、地域を活性化させたいという思いもあります。地元の有力企業がフランチャイズを通じてお茶の文化を広げ、地域を盛り上げる。加盟店様の事業成長にもつながる。そうしたウィンウィンの関係を二人三脚で築いていけたらと思っています。10年、20年と続く関係でなければ意味がない。だからこそ、一緒にブランドを育ててくださるパートナーを探しています。
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取材を終えて
サントリーと福寿園という強力なバックボーンを持ちながら、「お茶の文化を広げたい」という情熱が前面に出た取材でした。FL比率54%という収益性の高さ、福寿園ルートによる安定した原材料調達、そしてスタンド型モデルによる初期投資の抑制と、ビジネスとしての堅実さが際立ちます。
一方で印象的だったのは、「最初の3年が勝負」と語る慎重な出店姿勢。加盟企業と密に向き合いながら成功事例を積み上げていくという戦略は、ブランドへの信頼をさらに高めるものでしょう。
コーヒー全盛の時代に「まずはお茶を」と掲げる伊右衛門カフェの挑戦に、今後も注目です。

大阪府堺市出身の編集者・ライター。フランチャイズWEBリポートの運営メンバーとしてディレクション業務に携わり、現在は合同会社デジタル屋さん代表を務めている。これまで100以上のフランチャイズ関連コンテンツの制作を担当。Web制作やSEO分析など幅広い技術的バックグラウンドを活かし、「実装まで見える編集者」として記事制作に取り組む。既知のテーマに新しい視点を持ち込み、読み手が「ワクワクする」コンテンツ作りを信条としている。












