障害者グループホームの開業方法とは?初期資金や収益例・経営方法も解説

フランチャイズWEBリポート編集部 |2020年08月06日 公開 (2021年08月11日 最終更新)
人々と時代に求められる新しい福祉、障害者グループホームとは

少子化や高齢化をはじめとする社会の変化に伴い福祉サービスのニーズも多様化しています。その中でも最近注目を集めているのが、障害のある人が共同生活を送る障害者グループホーム(共同生活援助)です。 今回は、障害者グループホームの概要や注目を集めている理由、必要な資金や利用料の設定方法など開業後の経営方法について解説します。

障害者グループホームとは

障害者グループホーム

障害者グループホームとは、障害のある人が介護や各種相談など日常生活に必要支援を受けながら共同生活を営む住居のことです。障害者同士が少人数で支えあって暮らすことを特色としているため、戸建てやマンションなどの一般住宅がグループホームとして活用されています。地域社会との関わりを持ちながら、家庭的な雰囲気の中で暮らすシェアハウスと考えるとイメージがわきやすいでしょう。

障害のある人というのは、障害者総合支援法が定義する「障害者」に該当する人のことをいいます。例えば、知的障害や統合失調症などの精神障害、身体障害などが含まれます。その中でも、支援を受けながら自立した生活や共同生活を送ることができる人がグループホームの主な入居対象者です。

障害者グループホームが必要とされる理由

日本国内の障害者数は約965万人で、近年はうつ病や統合失調症・発達障害なども増加傾向です。障害者を専門に受け入れる施設はあるものの、高齢者の介護施設と比べると数が少ない状況でした。そのため、障害のある人のケアは家庭内での対応を余儀なくされるケースが少なくありませんでした。

しかし、家族の高齢化などで家庭内でのケアが難しくなりつつあり、障害者が尊厳を持って暮らすために地域や社会のサポートが必要不可欠となってきているのです。

障害者グループホームのニーズが高まっている

家庭内や施設内にとどまらず、自分らしく暮らしたいと考える障害者が増えています。施設に入居する障害者の支援も住み慣れた地域に移していくという国の方針もあり、障害者グループホームへのニーズが高まる傾向です。

障害者グループホームの入居者数は2020年4月現在で約13万2千人、2015年と比べると20%以上増加しています(厚生労働省資料)。また、障害のある人を支援する予算自体も年10%近いペースで増加しており、2021年度障害福祉サービス関係費の予算案は1兆7,303億円です。

したがって、障害者グループホームをはじめとする障害者ビジネスのニーズは拡大傾向にあると考えられます。

障害者グループホームの種類

障害者グループホーム

障害者グループホームは、障害支援区分の認定を受けた人であれば誰でも利用できますが、サービスの内容により大きく3種類に分けられます。

介護サービス包括型

介護サービス包括型のグループホームでは生活支援員が在籍し、夜間や休日に食事や入浴・排せつといった介護サービスを提供しています。障害支援区分が4以上の、比較的手厚い支援を必要とする人が主な入居者層です。日中帯は、入居が通う生活介護事業所や就労継続支援事業所などで介護などの支援を受けます。

利用者が希望するホームヘルパーと契約することができませんが、重い障害のある場合や移動支援(外出支援)が必要な場合などは、自治体の判断により個別契約が認められるケースもあります。

日中活動サービス支援型

日中活動サービス支援型のグループホームでは、夜間や休日に加えて日中帯も生活支援員による介護サービスを提供しています。心身の状況により外部の生活介護事業所などへの通所が難しい、障害支援区分が3以上の人が主な入居者層です。短期入所施設(ショートステイ)を併設する施設もあります。

1つの建物に複数のグループホームを設ける場合でも、建物あたりの入居者数は20名以内という制限が設けられています。

外部サービス利用型

外部サービス利用型のグループホームでは、外部委託した居宅介護事業所(ホームヘルパー)が入居者への介護サービスを提供します。グループホームの生活支援員と協働で介護サービスの提供も可能です。

障害支援区分が3以下の、支援が必要な場面が比較的少ない人が主な入居者層です。住まいの提供に特化したタイプのグループホームといえますが、収益面の関係から普及率が低いとされています。

障害者グループホームの開業方法

開業までに必要な手続きの流れ

障害者グループホームを開業する前に、グループホームの所在地を管轄する自治体に申請書を提出し、事業所としての指定を受ける必要があります。申請先(指定権者)は基本的に都道府県ですが、東京23区の場合が各区役所、政令指定都市や中核市の場合は市役所に申請します。事業所指定を受けられるまでの期間は、3~4ヶ月が目安です。事業所指定までの主な流れを紹介します。

(1)事業計画の作成

サービスの提供内容や想定する入居者像など、開業するグループホームのイメージを固めていきます。申請時に、自己資金や借入金といった収支計画の提出が求められるので具体化しておきましょう。また、グループホームは地域住民や入居者の家族と交流しやすい住宅地に設置するのが基本です。

(2)設備基準の確認

入居者1名あたり7.43平方メートル(4畳半が目安)以上の個室や、入居者の障害に応じたトイレ・浴室、入居者や職員が集まって過ごせる居室(リビング)など、設置する設備の条件が細かく決められています。消防法や建築基準法などにも、グループホーム設置に関する規定が設けられているため、十分に確認しておきましょう。

(3)申請先に事前相談

グループホームの設置申請に先立ち、自治体の障害福祉課にグループホームの開設予定などを相談します。事前相談を必須としない自治体もありますが、設備基準に合致しない場合はグループホームの開設が認められいため、開設の準備に入る前に相談することをおすすめします。

(4)申請書の提出

申請書類ができあがったら、自治体に提出します。提出日程の予約が必要な場合や、書類のファイリング方法など提出ルールが定められている場合があるので、書類提出のルールは自治体へ確認するようにします。書類不備が見つかった場合は担当者から連絡が入るので、早急に対応しましょう。自治体によっては、グループホームの現地確認が実施される場合があります。

開業に必要な初期資金

グループホームの開業に必要な資金は地域や立地によって異なりますが、約680万円~880万円が目安です。具体的な内訳を確認しておきましょう。

法人登記 約30万円
物件の取得費用 約100万円~200万円
内装・設備費 約150万円~200万円
人材確保費 約100万円~150万円
運転資金 約300万円

利用料金の入金は月末締め・翌々月27日前後なので、運転資金は最低でも3ヶ月分以上を用意しておきましょう。行政書士に書類作成を代行する場合は、別途30万円~50万円ほどの報酬が必要です。また、コンサルタント会社のサポートを受ける場合は、200万円~300万円前後の費用がかかります。

開業に必要な資格

グループホームの運営は法人に限られているため、設置申請を出す前に法人の設立が必須です。株式会社・合同会社・一般社団法人の場合は、法務局への申請後2週間前後で法人設立の登記が完了します。特定非営利活動法人(NPO法人)による運営も可能ですが、設立の手続きが煩雑となる点には留意が必要です。

グループホームを運営する建物は、自社所有・賃貸どちらでも問題ありません。一軒家やアパート・マンションを借り上げる場合は、障害者グループホームとして利用することをあらかじめオーナー(大家さん)に承諾を得るようにしましょう。

グループホームの設置申請とあわせて、運営に必要な人材も募集します。運営にあたっては、少なくとも以下の人材が必要です。

職種 人数 主な仕事内容
管理者 1名以上 施設運営を統括
サービス管理責任者 1名以上 入居者の支援計画の作成やサービス品質の向上
生活支援員 1名以上 入居者への介護
世話人 1名以上 家事の支援や生活相談など

生活支援員や世話人は無資格でも問題ありませんが、以下の資格を持っている人を採用するとサービスの質を高められるでしょう。

生活支援員 介護職員初任者研修終了者、介護福祉士
世話人 社会福祉主事任用資格を持っている人、社会福祉士

障害者グループホームの収益について

障害者グループホームを開設した後の集客方法や収益例を紹介します。運営にあたってトラブルが発生した際の対応方法や、行政機関の実地指導・監査の概要も参考にしてください。

収益例

グループホームの収益源は、入居者から受け取る家賃と国・自治体から支払われる障害福祉サービス報酬の2つが大部分です。月々の家賃4万円の、介護サービス包括型グループホーム(定員7名)を例に収支例を試算してみましょう。なお、水道光熱費や食費・共益費といった入居者負担する実費は収支に含めません。

【収入】
障害福祉サービス報酬 51万円~140万円
入居者からの家賃収入 28万円
合計 79万円~168万円
【支出】
法人が支払う家賃 20万円~50万円
人件費(※) 最低でも60万円
合計 80万円~130万円

※管理者とサービス管理責任者は1人で兼務、生活支援員・世話人を1名ずつ雇用と仮定

グループホームの障害福祉サービス報酬は、入居者の障害支援区分が高いほど多く支払われる仕組みです。一方、障害支援区分が高くなるほど手厚い介護が必要となるため、入居者の受け入れにあたっては従業員の負担も考慮する必要があるでしょう。

また、従業員の労働環境を整備することで障害福祉サービス報酬の加算(処遇改善加算)が認められたり、国や自治体の助成金を受給できたりする可能性もあるため、開業後も運営方針を見直し続けることが増収への道筋だといえます。

集客を含む経営方法について

グループホームは障害のある人にとってかけがえのない住まいとなるため、経営者には障害に対する深い知識や地域と連携して事業を進める意識が必要です。主な集客経路は、自治体の障害福祉部門や地域の相談支援事業所・医療機関などが見込まれます。グループホームに関する情報や管理者・スタッフのサービスマインドを参考に、ソーシャルワーカーが障害者に施設の紹介をするケースが少なくないため、従業員教育を徹底するだけでなく地域への積極的な情報公開も求められるでしょう。

入居者とトラブルが生じた場合は、基本的にはグループホーム内での話し合いで調整・解決を試みるのが基本です。一方、入居者の尊厳や生命を守る観点から、状況に応じて自治体の障害福祉部門や顧問弁護士などと連携して対応するケースもみられます。

また、数年に1度のペースでグループホームの運営状況をチェックする実地指導が行なわれます。自治体の担当者2~3名がグループホームを訪れますが、半日ほどかけて書類審査やサービス管理責任者へのインタビューの実施がメインです。しかし、報酬請求の水増しや入居者への不適切な対応が見つかると監査に移行し、より厳しい調査が実施されます。監査の結果次第では事業所指定が取り消される恐れがあるため、日頃から適正な運営姿勢を持ち続けることが大切です。

障害者グループホームの利用料

障害者グループホームの利用料は、入居者の障害支援区分や職員の人員体制などを元に国によって定められています。そのため、障害者グループホームが独自で利用料を決めることはできません。障害支援区分3の入居者を例だと、1人あたりの月々の利用料は約21万円が見込まれます。

【内訳】

・月々の利用料…114,300円(世話人1人で入居者4人をケアする場合)
・処遇改善加算…15,000円(最も高い割合の加算が適用された場合)
・夜間支援等体制加算…84,000円(夜間の介護が必要な人が4人の場合)

月々の利用料は入居者が1割を自己負担するのが基本ですが、生活保護を受けていたり住民税が非課税だったりする場合は自己負担額が免除されます。住民税が課税される世帯でも、他の障害福祉サービスと合わせた自己負担額は最大でも37,200円以内に調整される仕組みです。

家賃をはじめ食費や光熱水費・日用品費といった実費に関してはグループホームで負担額を定めても問題ありませんが、入居者に対して金額の根拠を明確化することが求められています。金額が高すぎると入居者の負担が重くなる点に留意が必要です。実費負担額は地域やグループホームによって異なりますが7万円前後が目安で、障害基礎年金の受給額を若干上回る程度とされています。

障害者グループホームについてのよくある質問

障害者グループホーム開業に関するよくある質問を紹介します。

障害者グループホーム運営上の工夫は何かありますか?

地域交流の場を多く確保するために、地域のボランティア活動や祭典などへ積極的に参加する取り組みが大切です。他の事業所と連携して障害者のケアを進められるよう、地域の自立支援協議会や勉強会などを通じた情報交換に取り組む事業所もみられます。

障害者グループホームを運営するメリットはありますか?

入居者を一度獲得すると長期にわたって入居し続ける場合が多いため、安定した収益が見込まれるのがメリットです。入居者のニーズを的確につかみ、他の相談支援事業所や医療機関などとの連携が深まれば入居の引き合いも増え、事業拡大のチャンスが生まれるかもしれません。

病院と障害者グループホームはどう違うのですか?

病院では心身の不調を治療する施設で、生活範囲が病棟や院内に限られるのが実情です。一方、グループホームは暮らしの場であり、地域の中で生活を送るための支援を提供しています。なお、医療が必要な入居者には、通院をサポートするだけでなく訪問診療を提案する選択肢もあります。

障害者グループホームってどこにあるのですか?

グループホームは全国各地にあり、民家をグループホームとして利用している場合も少なくありません。アパートやマンションを借り切ってグループホームを運営する法人もありますが、1軒あたりの規模は20名前後と小規模です。

障害者福祉制度を使うにはどうすればいいのですか?

障害福祉サービスを利用するには最寄りの自治体の障害福祉部門に相談した上で、障害支援区分の認定を受ける必要があります。利用したいサービスや施設は、障害者が自分で決めることができますが、相談支援事業所のサポートを受けながら必要なサービスを組み合わせるケースが多いです。

人々と時代に求められる新しい福祉、障害者グループホームとは

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