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2016-04-24 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
とんかつ新宿さぼてんとマクドナルド看板から見る!お店を覚えてもらえる看板設置法
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このコラムのポイント
「いつも何気なく通る道なのに、お店があることは認識していてもお店の名前がわからない・・」。そんな消費者にも店の名前を覚えてもらうには、看板をどこに設置するかが重要です。 飲食チェーンのとんかつ新宿さぼてんとマクドナルドの事例も交えつつ効果的な看板設置方法をご紹介していきます。
フランチャイズWEBリポート編集部
毎日店前を通るおじいさんが「とんかつ新宿さぼてん」を認知していないという話
「お!この店、今日開店したのか?何の店だい?」
今から10年ほど前のある日、私は当時勤めていた会社(株式会社グリーンハウスフーズ)の店長研修のひとつとして「とんかつ新宿さぼてん西小山店」の前で、店長に対してお客様アンケートの方法を指導していました。
そんな時、商店街に面したそのお店の前にいた私は、自転車に乗って通りがかったおじいさんに冒頭の様に声を掛けられたのでした。
おじいさんは、このお店が今日オープンした新しいお店だと思ったようです。私は答えました。
「ありがとうございます。お持ち帰りのとんかつ専門店です。でも、このお店は今日オープンではなく10年前からあったんですよ」
すると、おじいさんは・・・
「そんなことないだろ!わしはこの商店街を毎日自転車で走っているんだぞ!こんな店はなかったぞ!」
と言い残してさっさと自転車に乗り、走り去って行ったのです。
前回のコラム(読めない店名は認識されない!?マクドナルド藤田田氏も意識した効果的な店舗名表記)で、認知度のお話をしましたが、10年も営業をしているこのお店も、案外知られていなかったのかも知れませんね。
実際、その時に行った認知度調査では、この店の認知度は40%でした。
駅前商店街で10年営業しているお店としては、かなり低い数字です。
でも、何故そんなに低い認知度になってしまったのでしょうか?
実は、その答えのヒントが、先ほどのおじいさんとの会話の中にありました。
おじいさんは「こんな店はなかった」とおっしゃっていました。
つまり、10年間、お店の前を通っていてもそこに「とんかつ新宿さぼてん」があることはわからなかったのです。
おじいさんが認知していない理由は「自転車からの目線」がカギだった
何故毎日目の前を通っていたのにわからなかったのでしょうか?
もしかしたら、おじいさんは「とんかつ専門店」というお店に関心がなかったのかも知れません。
また、当時のとんかつ新宿さぼてんはテレビCMを流していたわけではありませんので、ブランドそのものを知らなければ、そこにお店があること自体気がつかなかったのかも知れません。
だとしても、お店は人通りの多い商店街の中にあるのです。決して悪い場所ではありません。
駅を出て商店街を歩けば50mほどでお店の前につくことが出来ます。
いくら何でも目に入らないわけはないのです。
目に入れば、「何だろう?」くらい思うのではないのかな?
私はそう思いました。
そこで、私は、そのおじいさんと同じ目線になってみようと、スタッフの自転車を借りて商店街を走ってみました。
すると、思ってもみないことに気がついたのです。それは・・・
「看板が見えない」
と言うことなのです。
自転車で走っていると、運転者の視点は目の前5mほどの路面に集中します。
さぼてんの看板は、商店街の通りに面したお店の正面入口に商店街の通りと平行して掲げられています。
これは、どのお店も同じです。
さらに、このお店は2階に突き出し看板も設置していました。
この看板は商店街の歩行者に対して看板面が見えるように垂直に突き出して設置されているものです。
しかし、自転車で走っていると、2階の看板なんて目に入らないのです。
そんなところを見て走っていたら危ないですからね。
でも、これはあくまで自転車に乗っていることが原因なのかもしれません。
お店の看板は「人の目線やや下」を意識して設置すべし
そう考えた私は、今度は商店街を歩く人たちの目線を観察してみました。
すると、だれひとりとして、2階の看板やお店正面の大看板に目をやる人はいなかったのです。
ほぼ全ての人が、目線をやや下に落として前を向いて歩いているのです。
その目線では、2階の看板は「視野」には入っているかも知れませんが、「とんかつ新宿さぼてん」とは認識できていないでしょう。
そして、ほぼ全ての人が、お店の前を通るときにお店の方を向いたり目線を動かしたりもしていないのです。
これでは、入口の上の大きな看板も目には入っていないでしょう。
つまり、商店街を歩く人たちには、「とんかつ新宿さぼてん」の看板はほとんど見えていないと言うことなのです。
私たちは、お店を開店させるときに、正面入口の上などに大きな看板を設置します。
そこに設置すればそれがお店の名前であることがわかるはずと思っているからです。
しかし、入口上の正面看板は、商店街を真っ直ぐに歩いていると、あまり目線には入ってこないのです。
目線に入らないお店の看板は、記憶されるはずがありません。
やや下向き加減に歩いている人は、2階の看板なんてもっと目線に入りません。
私たちは、歩行者に向けて看板面を見せているのですから見えているはずだと思っていますが、見えてはいてもそこに焦点は合っていないのです。
なので、これもまた記憶には残りません。
自転車に乗ったおじいさんの言う通りなのです。
「そこにはお店などはない・・・」
これはショッピングセンターの中のお店でも同じです。
ショッピングセンターのお店の看板は、そのほとんどが、通路に面して平行に設置されています。
でも、お店の正面に立ってお店を真っ直ぐ見るお客様はほとんどいません。
なので、お店の名前が明確に記憶されにくい状態にあるのです。
秋葉原駅のマクドナルド看板実例
お店にとっては、「そこに〇〇と言う名前の店がある」と言うことをはっきりと通行人に対して認知してもらわないと困りますよね。でも、見えてはいないのです。
そこで、対策としてお薦めするのが、「歩行者目線の高さに合わせ、目線に正対して看板面を向けた看板を設置する」と言うことです。
一般的には「置き看板」「スタンド看板」などと言われているものです。
ただ、店舗前のスペースがなかったり、ショッピングセンターのはみ出し規制に引っかかったりして設置できないときもあります。
そう言うときは、店舗内の通路に近い部分の内壁を利用するのです。
写真の例は、秋葉原駅の自由通路内にあるマクドナルドの看板です。
こう言う工夫をすることで、そこにお店があるという認識率が大きく向上するのです。
なんだかあたりまえのようなアドバイスかも知れませんが、意外にもこのことに気がつていないお店がとても多いのです。
もしかしたらあなたのお店の看板もそうなっているかも知れませんよ!
あなたのお店の看板は、歩行者にはほとんど見えていないのかも知れません・・・
もしもそうだとしたら・・・・
大変もったいないことをしているのです。
ぜひ、その現実を理解してすぐに対策をしていきましょう!!
くどいようですが、「見えない看板は、そこにお店がない」のと同じことですよ!
冒頭のとんかつ新宿さぼてん西小山店の看板も改善されました
さて、西小山の「とんかつ新宿さぼてん」の看板ですが、その後、設計担当者が目線を意識した目立つ看板を設置してくれました。
おかげで売上はぐんとアップしたのは言うまでもありません。
是非一度西小山商店街の中にある「とんかつ新宿さぼてん」の看板の実物を見に行かれて下さい。もちろん、その際は、美味しい「とんかつ」をお土産に買うのをお忘れなく!