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2016-07-17 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
繁盛店のプロの仕事!徹底的にこだわる品質
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このコラムのポイント
惣菜店で約20年に渡り店長を務めてきた方の仕事に対するプロ意識、お客様を想うサービスがお客様に選ばれるお店へと繋がります。
フランチャイズWEBリポート編集部
揚げ物惣菜店 店長の強いポリシー
今回のお話は、今から10年前、ある「揚げ物総菜のテイクアウト店」で店長を勤めていたKさんの強いポリシーのお話です。
プロ意識で管理する商品品質
「こんな商品売ってお客様からお代金をいただこうというの?ダメ!!作り直して!!」
彼女は、当時70歳!このお店でもう20年も店長を続けている大ベテランでした。
根は優しくて親切な方ですが、こと仕事についてはムチャクチャ厳しい姿勢で臨むプロ中のプロでした。
彼女のこだわりは、「商品の品質」です。
この店で扱っているのは、とんかつを軸とした揚げ物総菜です。
このチェーン店では、工場で作った総菜を温め直して販売しているのではなく、全てお店のキッチンで一からパン粉を付けてフライヤーで揚げています。ただ、ひとつひとつが手作りですので、調理担当者の技術によっては、品質に少しムラが出てしまうことがあります。その点は工場製品とは全然違います。
もちろん、チェーン店としては、品質にムラのある商品をお客様に提供することがないように、非常に厳しい基準で店舗指導をしています。油の鮮度やフライヤーの温度管理はもちろんのこと、大きさや揚げ色、揚げムラなども基準を外れた商品が提供されないように、写真を使った基準表で徹底管理していました。
ところが、このK店長のこだわりは、会社基準のそれを大きく上回っていたのです。
いくら厳しい会社基準であっても、人が手作りで揚げるのですから、多少の誤差の範囲を設けていたのですが、彼女は、いつもその基準の最高レベルでしか販売を許さず、ちょっとした揚げムラ、ほんの少しの揚げすぎ、ほんの少しの形状崩れなどで、「これくらいは許容範囲だ」と、マネジャーが判断しても彼女は絶対に譲らりませんでした。
仕事へのプライド
彼女がそこまでこだわるのには理由があります。
それは、自分達の仕事が、お客様の生活の中で、とても大切な役割を果たしていることを知っているからなのです。そして、そのことに強いプライドを持っているからなのです。
このチェーン店の揚げ物総菜は、他のライバル店で販売されている揚げ物総菜よりも、ほんの少し高くなっています。もちろん、それには、品質の良い材料を手作りで提供していると言う理由があるのですから致し方ないのです。
彼女は、そんな高い商品を買って下さるお客様の期待を裏切りたくなかったのです。
他店との価格差を超えて、自分のお店で買って下さると言うことは、お客様にとってこれは「いつもの総菜」ではなく「ハレの日の為の総菜」であるはずだからだ、と思っているのです。
彼女は、自分の店の商品が、お客様のご自宅の食卓が、何かの記念やお祝いなどでいつもより少し華やかに並べられているシーンを想像しているのです。
そんな嬉しい食卓で、もしも、揚げムラがあったり、揚げすぎだったりすると、とても残念気分になります。
K店長は、自分達が販売した商品で、そんな残念な気分にさせるなんてとんでもないことだと考えていました。
わざわざ買って下さったお客様に、そんな想いは絶対にさせない!!
だから、商品の品質には徹底的にこだわる!
お客様の立場に立って考える
それが、K店長の想いなのです。
もちろん、自分達の商品でお客様を、最初から残念な気分にさせたいと考えているような店長はいないと思います。
しかし、結果的にそうしてしまっていることって、実際にはものすごくたくさんあるのです。
それは、お持ち帰り総菜のお店だけではありません。
ファーストフードでも、フルサービスのレストランでも、カフェでも同じことです。
出てきた料理を見たとたん、もしくは食べたとたんに、残念な気持ちになってしまうことがよくります。
なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょうか?
それは、提供する料理の品質に対するこだわりを「徹底していない」からなのです。
「これくらいなら良いだろう」
「この程度なら仕方が無いよね」
「味は変わらないんだから」
「うちは安いんだから我慢してもらおう」
「この程度で廃棄してしまったら、たくさんのロスが出てしまう」
きっとそう言う気持ちがどこかにあるのでしょう。
店長、調理スタッフ、ホールスタッフの誰かがそのこだわりを徹底していたら、お客様をそんな残念な気分にすることは無かったかも知れません。しかし、誰もが徹底しなかったので、そうして大切なお客様を悲しませることになってしまったのです。
「お客様の立場に立って考える」
あたりまえのことですが、これが出来いてないお店が意外とたくさんあります。
さて、あなたのお店は、いかがでしょうか?
お客様を悲しませるような品質の商品を提供していませんか?
ドキッしたら・・・・もう一度お客様への想い、そして商品へのこだわりを徹底していきましょう。
ちなみに、K店長の店は、そのデパ地下でも、チェーン店の中でも断トツの売上を誇っています。
数年前、惜しまれながら引退されましたが、そのこだわりのDNAは、しっかりと生き続け、お店は今も売れ続けています。
※今回のお話、もっと詳しく知りたい方は、拙著「『競合店に負けない店長』がしているシンプルな習慣」(同文舘出版)をお読み下さい。K店長のポリシーをさらに深く語らせていただいております。