介護フランチャイズは失敗する?成功のコツや実際に開業した人の声を紹介
需要が高い介護事業はフランチャイズでも開業することができます。しかし、必ずしも成功するわけではありません。さまざまな要因での失敗リスクは介護事業だけでなく、すべての事業に付きまといます。事前に失敗する理由や成功のコツについて知ることで、困ったときの助けになるかもしれません。今回は介護フランチャイズの失敗の原因や、成功のコツについて、じっさいに開業した人の声とあわせて紹介します。
介護フランチャイズで開業して失敗する理由
まずは介護フランチャイズの開業で多い失敗理由について解説します。失敗理由を把握しておくことで、万が一のリスクを減らすことができるので、必ず覚えておきましょう。
資金不足や収支計画の甘さ
とくに多いのが資金面の失敗です。介護フランチャイズは施設の設備や集客など、多くのことにお金がかかります。そのため、見立てが甘いと失敗する可能性が高くなります。資金面に余裕を持たせるだけでなく、具体的にどこにどれくらいの資金がかかるのかもあわせてシミュレーションしておきましょう。
資金面で失敗しないためのポイントは、開業前の収支シミュレーションで、好調期に加えて売上が振るわない場合の想定をしてもらうことです。とくに開業後すぐは利用者が少ない可能性があり、軌道に乗るまで時間がかかるかもしれません。また、フランチャイズ本部によっては、安い工事業者を紹介してもらえたり融資をしてもらえたりなど、資金面のサポートが用意されていることもあります。
競合他社との競争に負ける
資金面以外の失敗で多いのが、競合他社の存在です。介護事業はサービス内容で差別化がしにくい業種であり、すでに人気の施設がある場合は思うような集客ができないことがあります。だからこそ、サービスの質や集客施策などで競合に打ち勝つことが、施設を存続させるためにも重要となります。同じようなサービスでも、質が高ければ利用者の満足度も高くなります。
フランチャイズで競合他社に打ち勝つためにもっとも重要なのは、サービスに対する本部の本気度を見極めることです。どれだけ加盟店が頑張っても、本部も同じように頑張っていないとフランチャイズは成長できません。さらに、サービスのターゲットである利用者に向けて適切な集客施策を打っているかを評価することが大切です。
スタッフの定着率低下
昨今はさまざまな業界で人手不足が叫ばれていますが、介護業界も人材不足問題が大きな業界です。介護施設では、従業員間でのトラブルや労働環境の不満などで従業員離れが起きることも珍しくありません。介護は肉体労働でもあるので、心身ともに疲れやすく、快適に働けない環境では従業員が定着しづらくなってしまいます。
人員を定着させるには、人員を「増やす」だけでなく、「減らさない」ためのサポートが整っている本部を選ぶことがもっとも大切です。増やすサポートとしては、本部による採用媒体への掲載などが該当します。一方、減らさないサポートでは、加盟店向けの問い合わせ窓口設置や、業務効率化システムの開発・導入の有無、技術や資格取得のための研修が該当します。
「儲かりそうだから」という考えは危険
事業を新たに始める際に、利益を重視するのは当然のことです。しかし、「儲かりそうだから」という考えだけでフランチャイズブランドを選ぶことは非常にリスキーといえます。フランチャイズに限らず、人にはそれぞれあらゆるものと相性が存在します。利益だけを基準に判断すると、相性がよくないフランチャイズ本部を選んでしまいかねません。
また、介護事業において利益のみを追求することは難しいケースもあります。その理由は、介護事業の利益の大半は介護報酬ですが、設定金額が決して高くないからです。また、利用者にとって快適な施設を作るためには、設備機能を充実させるなど、資金が多く必要になることもあるでしょう。よって介護事業では「お金を稼ぐ」というだけでなく、オーナーが社会福祉へのやりがいを実感したり、利用者からの感謝が原動力になるか、ということも重要です。
介護事業の需要は本当に高い?
そもそも、介護事業は需要が高いといわれるものの、本当にそれほど需要があるのか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。ここでは、介護事業の需要について、事業所数の推移とあわせて解説します。
全国の介護施設の推移について
厚生労働省の調べによると、2016年には居宅介護支援事業所の施設数は4万件以上にもなるほど増加していました。しかし、新型コロナウイルスの流行後、徐々に施設数は減少を続け、2020年には4万件を下回っています。一方で、居宅介護支援事業所の利用者数は増加を続けていることから、1つの施設での受け入れ人数が増加していることが予想できます。
また、2024年1月に東京商工リサーチが発表したレポートによると2023年は介護事業者の倒産数が、2010年以降最多だったとしています。
介護事業の需要が高いのは事実
内閣府の「令和3年高齢社会白書」では、日本の総人口に占める高齢者の割合は28.8%であり、とくに後期高齢者が多いことがうかがえます。2010年以降、75歳以上の人口は1.5倍にも増えており、今後も増加することが予想されています。高齢化だけでなく、少子化も進んでいることから、これまで「親の介護は子供がするもの」だという考えから変化しつつあり、将来的には介護施設を利用する人も増加する可能性が高くなっています。したがって、介護事業への需要は高いといえるでしょう。
介護フランチャイズでの開業を成功に導く3つのコツ
介護フランチャイズの開業を成功させるためには、これから紹介する3つのコツを抑えることが大切です。フランチャイズブランド選びの参考にもなるので、必ず確認するようにしてください。
信頼できるフランチャイズに加盟する
基本的なことではありますが、加盟先は信頼できるかを判断しましょう。加盟店とフランチャイズ本部はビジネスパートナーであり、上下関係はなく、対等な立場です。お互いに信頼し、協力体制を築くことで、助け合う気持ちや仲間意識が生まれます。そのため、信頼できる本部と出会うことがもっとも大切です。信頼できるフランチャイズ本部を見極めるためにも、説明会に足を運んだり実際に直営の施設を見学したりするなどして、情報を集めるようにしましょう。手間を惜しまずに動くことが、本部を見極めるためには必要です。
需要や将来性を綿密に調査する
介護と一口に言っても、デイサービス・訪問介護・老人ホームなどさまざまな業態があります。どの業態が必要とされているかは開業先の土地によって異なるので、開業立地における需要や、市場全体で変化するニーズをキャッチすることが大切です。地域の特性やフランチャイズ本部と相談をしながら、成功確率が高い業態で開業するとよいでしょう。
地域密着型のマーケティングを行なう
介護施設を利用するのは、その土地に住む地域の人たちです。よって、利用者を増やすためには、ポスティングなどで地域での認知度を獲得していかねばなりません。さらに、地域のケアマネージャーとつながりを作るなど、地道な活動も必要です。介護施設は地域密着型のビジネスであり、どれだけ地域の人に寄り添えるかが成功の秘訣と言えるでしょう。
※ケアマネージャー:介護者・支援者の相談を受け、施設の紹介などを行なう役割を持つ職種
介護フランチャイズに開業したオーナーの声
それでは、ここで介護フランチャイズをじっさいに開業したオーナーを簡単に2件紹介します。詳細記事もぜひあわせてご一読ください。
介護未経験のパパが介護事業で独立したワケ
「ブルーミングケア三郷高州」の佐久間 史晃(さくま・ふみあき)オーナーは2児の父です。高校卒業後に7年間スーパーマーケットで働き、のちにおでん居酒屋に転職。おでん居酒屋では店長やマネージャーに抜擢されるなど順調なキャリアを歩んでいました。
しかし、独立を意識し、最初に飲食店をオープンしたものの、フランチャイズフェアに足を運んだことをきっかけに、介護業界に興味を持ちます。介護業界は食事提供をする業態もあることから、飲食業界の経験を活かせると感じ、介護業界への参入を決めました。加盟後はギャップや苦労もありながらも、複数の事業所経営を目標に邁進しています。
我が子が一人で生きていける場所を作った母親
「ペット共生型障害者グループホーム わおん」のレベニューシェアに参画した株式会社KURASURUの日暮 美名子(ひぐれ・みなこ)オーナー。日暮オーナーは母、息子、娘と血縁者が障害者であり、息子の重複障害の診断を受けたことがきっかけで介護業界への道を歩み始めました。将来、自分が亡くなった後も息子が1人で生きていけるよう、十分なお金と、サポートをしてくれるような組織づくりをしたいと考え、障害者グループホームわおんを見学後、参画を決意します。障害者だけでなく、殺処分される予定だった犬・猫の居場所を提供できることも、わおんの魅力と語られています。