2015-09-10 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー
安紗弥香 |
コンビニドーナツがもたらす業界への効果
このコラムのポイント
昨年から全国のコンビニエンスストアで見かける機会が多くなったカウンターコーナーのドーナツ。淹れたてコーヒーとの同時購入も見込めそうなドーナツですが、これはどのような影響を業界にもたらしたのかについてわかるコラムです。
フランチャイズWEBリポート編集部
こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安紗弥香です。隔週コラムの第8回は、「コンビニドーナツがもたらす業界への効果」について触れていきます。
はじめに
皆さんは、コンビニにできたてのドーナツがレジ横にあることをご存知でしょうか?
チェーンによってはレジカウンターのショーケース内に置いてあったり、パンコーナーに並べられていたりしますが、前回でお伝えした「淹れたてコーヒー」と同様、多くのチェーンで販売されている、今やコンビニチェーンに欠かせない商品の一つになっています。もちろん、相性の良い、淹れたてコーヒーとのセット提案効果も期待できます。今回は、そんなコンビニドーナツが、どのようにコンビニ業界や他業界に影響を与えているかを探っていきます。
ドーナツ市場の変遷と現状
日本におけるドーナツ登場の歴史は、第二次世界大戦あたりまで遡りますが、本格的にドーナツが広がり始めたのは、1970年と言われています。ドーナツ店で知らない人はいない「ミスタードーナツ」と、今は日本から撤退した「ダンキンドーナツ」の本格的なチェーン展開が、その火付け役のようです。作り方、食べ方ともにお手軽なドーナツは、チェーン数も増え、多くの人の間で人気が急上昇。また、2006年の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」に始まる海外チェーンの日本上陸を起点に、今でも老若男女問わず、安定的な人気を誇っています。
そのような中、2014年11月に、セブン-イレブンが関西地区で本格的にドーナツ販売に参入するニュースが日本中を駆け巡り、各メディアがこぞって話題にしました。そのとき、本格参入のニュースととともに伝えられたのは、「ミスタードーナツ」などドーナツ店とコンビニとの比較。価格帯や見た目、味、買われ方などについてどう違うのかをいち早く記事形式でまとめるライターや個人ブロガーも多く登場しました。結果的にセブンドーナツは、コンビニコーヒー同様ヒットし、1日1,000個売り上げる店舗も出現。セブン-イレブンは、全国各地にある専門のパン製造工場で作られていますが、早々に製造後3時間以内に店舗へ運べる体制を整え、年間6億個を販売する見込みです。
ドーナツも貢献!?今夏のコンビニ売上高が昨年より好調
2015年7月のコンビニエンスストア売上高は、日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、全店ベースの売上で9,291億8,100万円、前年同月比で+5.1%増の結果です。この要因は天気の良さや気温の高さなどにより、アイスクリームや飲料などの夏物商材はもちろん、淹れたてコーヒーなどを始めとするカウンター商材が好調だったことにあります。カウンター商材にはもちろんドーナツの売上も計上されています。
ちなみにドーナツ以外にも、コンビニエンスストアではスイーツを販売しています。かつて、ローソンのロールケーキがブームになって以降、いわゆる「コンビニスイーツ」に注目が集まるようになりました。総合企画センター大阪が8月に発表した、コンビニエンスストアオリジナルスイーツ市場についての調査結果によると、2014年度のコンビニスイーツ市場は、前年比7.7%増の2,274億円でした。この傾向は2015年度も継続し、2015年度の市場規模は全年度比4.2%増の2,370億円になると予想されています。
コンビニドーナツは何をもたらしたか
では、淹れたてコーヒーと並んですっかりコンビニエンスストアの「顔」の一つになり、安定的なヒット商品となったコンビニドーナツは、コンビニ業界やその他の業界にどのような影響を与えているのでしょうか。私の視点も含めて3点、まとめてみます。
1.ドーナツそのものが再注目されている
ドーナツは先述の通り第二次世界大戦中からあり、1970年に爆発的に拡大しました。その後、ブームを何度か繰り返して現在に至りますが、コンビニエンスストアでドーナツを扱うようになってから再び注目を浴びています。そのため、主な比較対象になっているミスタードーナツ側は戦々恐々とするどころか、むしろ業界として再注目されていることを歓迎している様子です。
2.ドーナツ店との住み分けが明確化
それでは、ミスタードーナツを始めとするドーナツ店と、コンビニドーナツとのぶつかり合いは発生しているのでしょうか。
実は、ドーナツ店とコンビニエンスストアでは、ドーナツを売る位置付けが違っています。コンビニドーナツはメインではなく、あくまでもサイドメニューなのです。むしろ、淹れたてコーヒーやその他の商品の販売数を押し上げていくことを想定して投入したところがあり、ドーナツそのもので勝負をかけているドーナツ店とは一線を画しています。つまり、「ミスドvs.コンビニ」は、表面的な比較対象なのです。
3.店舗オペレーションはどう変わるか
淹れたてコーヒーだけでなく、ドーナツの販売業務まで増えた店舗オペレーション。ドーナツの販売期限管理(いつまで販売ができるかを管理すること)はどのような状態なのでしょうか。
例えば、常温のパンコーナーに陳列しているチェーンは、他のパン商品と同じくパッケージに記載された賞味期限をもとに管理します。そのため、業務量についてはそれほど大きな影響はないかもしれません。しかし、カウンターで販売しているチェーンについては、加温もしていることから1日の中で何度も入れ替える必要があります。
ファストフード(揚げ物や中華まんなど)でも同じスタイルを取っていますが、これらの販売期限管理は計画的にノートなどで行っています。ドーナツは最低でも2種類以上扱っている店舗がほとんどですから、時間で計画的に管理していく商品数が一気に増えることになるのです。
その分、オーナーや店長はしっかりとスタッフを育成していかなければいけません。見落としがあってはお客さまに影響してしまいます。ますます計画的においしいドーナツを提供できる販売・管理体制を作ることが急務なのです。
最後に
さて、ここまで、コンビニドーナツがもたらす業界への効果に焦点を当てて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
接客、レジ、カウンター商品、清掃、発注など…店舗で発生する多くのサービスや業務をどのようにして習得し、対応しているのか、気になったことがある方も多いと思います。
その秘密は、マニュアルと育成にあるのです。次回はそんなマニュアルの秘密に迫ります。どうぞお楽しみに!