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2016-02-07 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
マクドナルド元店長が語る!経営者が知るべき「商圏」を設定するメリット
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このコラムのポイント
店舗経営者の方、自店の「商圏」どのように定めておられますか?そもそもなぜ定めるのかイメージはつくでしょうか。実はかのマクドナルドが誘導看板を徹底していることにも関連してきます。設定方法と商圏を定めるメリットについて解説されたコラムです。
フランチャイズWEBリポート編集部
成功するための集客対策は5W3Hを決めることから始まる
「このお店の『商圏』について教えて下さい」
私が研修やコンサルティングの際に店長や経営者にこのようにお尋ねすると、ほとんどの方は、
「え~この街全体かな・・・」
「うちは、顧客名簿なんて作ってないからわかんないよ・・・」
「結構遠くから電車に乗ってくるんですよ。だから広いと思うな」
「うちは車で来るお客様が多いから、半径10kmはあるんじゃあないかな?」
とまあ、だいたいこんな感じで答えて下さいます。
全くわかっていない・・・とまでは言いませんが、いずれにせよあまりわかってはおられません。このような「商圏の理解」だけでは、「具体的な集客作戦」の役に立たないのです。
「具体的な集客作戦」とは、「どこにいる」「どんなひと」に「どんな内容」を「なぜ」、そしてそれを「いつ」「どんな方法」で「どれくらいの量」で「いくらの予算」で行うかと言うことです。これを5W3Hと言います。
この「具体的な集客作戦」を根拠を持ってやっているかどうか?で、その店やチェーン店の繁盛の成否が決まります。そこから始めるのが「商圏の理解」です。
前回のコラムで、新しい売上公式として「ポテンシャル×吸引力」という考え方をご紹介しました。その中で、ポテンシャルの元になるのが「商圏」であるとお話ししたのを覚えておられるでしょうか。
今回は、その「商圏」についてお話ししましょう。
商圏の設定が必要な理由は認知度アップ&販促の効果を上げるため
「商圏」は、平面的に思えますが、実はとても立体的です。
そして、「商圏」は、そのお店のお客様、つまりターゲットがどのような方なのかによって形や大きさが変わってきます。
一般的に「商圏」は、来店されるお客様が住んでいる場所の範囲もしくは、単純に半径500mとか2kmとかと決めているケースが多いと思います。
個人店やチェーン店の中には、「商圏」という概念そのものがない場合もありますが、私に言わせればとてももったいないことをしていると思うのです。
なぜ、「商圏」を設定する必要があるのかというと、認知度向上や販促などのアプローチに効果効率を高めるためです。
チラシなどアナログマーケティングをする前に商圏設定を!
最近は、ネットやメルマガなどで、格安もしくは無料で広告宣伝が出来るからと言って、数打ちゃ当たるといった感覚でめったやたらに告知活動をするケースが増えていますが、実店舗に於いては、やはりチラシやポスター、看板などの旧来のアナログな告知活動の効果がまだまだ高いのです。
しかし、この方法の欠点は、「コストが高くつく」ことです。
看板やチラシなどの制作コストや配付するための人件費などがとても高くつくのです。
とは言え、このコストを削減するために配布枚数を単に少なくしたり、掲出コストの安い目立たない場所に看板を設置したりしても潜在顧客へのアプローチ効果はかえって出にくくなります。
しかし、「商圏」が明確になっていたら、そのアプローチをする範囲を絞ることが出来ます。
チラシ折り込みならば、どこの範囲に配付すれば良いのか、手捲きするのならば、何時にどこで誰に配れば良いのか、などをきめ細かく「根拠を持って」決めることが出来るのです。そうすれば、少なくても安くてもその効果を高めることが出来るのです。
商圏の設定方法3つをご紹介
さて、その「商圏」ですが、wikipediaでは「商圏(しょうけん)とは、ある商業施設が影響を及ぼす地理的な範囲をいう」と定義されています。
ただし、残念ながら、その範囲の設定方法についての定義は紹介されていません。「商圏」は、その範囲を根拠を持って定義する必要があります。
では、そんな大切な「商圏」はどのようにその範囲を設定すれば良いのでしょうか。色々な考え方がありますが、今回はそのうちの3つをご紹介しましょう。
1.リブ商圏(Live)
これは、Live、つまりお客様が住んでいる場所の商圏です。
会員カードやアンケートなどでお住まいの住所を調査し、それを地図上に記入し、お店から近い80%の範囲を商圏としているものです。
この考え方は、お客様のほとんどがご自宅から直接来店されるようなお店だと使えますが、現実的には、そうではないお客様もたくさんおられますので、この範囲を「商圏」とするにはあまりにも不正確であると言えます。
なので、私はどんな業態の場合でもこの考え方で「商圏」を設定することはありません。
2.フロムツウ商圏(from-to)
これは、前回のコラムでも紹介しましたが、「お客様がお店に来店される直前にいた場所と直後に行く場所のどちらか近い方を地図上に印をつけ、その印の内、お店から近い80%を商圏とする」という考え方です。
この方法で設定した商圏だと、お客様が直前直後に実際に居た、もしくは行く場所ですから、その場所に対して告知活動を行うとターゲットにヒットする確率が高くなります。
また、ご自宅やお勤め先から直接来店されたお客様の範囲もわかることになります。
なので、チラシの新聞折り込みやポスティングの範囲を絞り込むことが出来るのです。
この商圏調査は、来店されたお客様へのアンケートにより地図上にそのポイントを書き込んでいく方法で行います。
3.目的機会商圏
これは、フロムツウ商圏に似ていますが、さらに詳しく来店動機を加味したアンケートを行いその範囲を決めていきます。お客様には、「このお店に来ようと決めた場所」を伺います。
そして、その時何がキッカケでこの店を知り、もしくは思い出し、何が決め手でこの店に決めたのか?も伺うのです。
お客様は「以前利用したことを思い出したから」とか、「店頭看板を見て」「チラシを渡された」「携帯のクーポンサイトを見た」「メルマガを受け取った」「誘導看板を見た」「店頭でスタッフに声を掛けられた」などのキッカケがあったから、この店を選択したのです。
そして、「以前利用した時スタッフが感じ良かったから」「以前利用した時美味しかったから」「看板が目立っていたから」「クーポンが魅力的だったから」「駅の目の前にあったから」などの決め手を教えて頂くのです。
これらのアンケート調査により、商圏の範囲をかなり狭い範囲に絞り込むことができるようになります。
絞り込めれば、告知活動はとても楽になりますよね。
商圏は「交通手段」と「曜日時間帯」の条件を加えると具体的にわかる
以上が、今回ご紹介する商圏の考え方です。でも、これだけでは、まだまだ具体的ではありません。
先ほども言いましたが、「商圏」は立体的な形をしています。地図上の平面データにふたつの条件を加えるのです。
1)交通手段・・・来店すると決めた場所からお店までの交通手段。電車、車、バス、自転車、そして徒歩のそれぞれの商圏を見てみるのです。
2)曜日時間帯・・・平日のランチと日曜日のディナーは、来店されるお客様が全然違ったりします。
このふたつの要素を一緒に考えて行くことで「商圏」は、より具体的な活動の役に立つようになるのです。
マクドナルドが誘導看板を徹底的に出しているのは「商圏」を根拠付けしているから
私が在籍していたマクドナルドでは、この「商圏」を個店個店で細かく設定しています。
そのことがよく分かる例として、郊外型ドライブスルーのお店ならば、お店まで1~2kmの所に大きな誘導看板がありますのでそれをご覧いただけたらと思います。
また、駅前のロードサイド店や商業施設の中の店でも、ありとあらゆる所にお店の存在を示すための看板、告知ポスターなどを設置しています。これらは、彼らが「商圏を根拠を持って設定」しているからこそ出来る事です。
ここまで個店個店が徹底的に誘導看板を設置しているようなチェーン店は、恐らく世界中でマクドナルドだけだと言っても過言では無いと思います。それだけ彼らは「商圏」を大切にしているのです。
だから、その商圏の中にいる潜在顧客、つまりポテンシャルを誘導看板などを設置することにより吸引力を高めているのです。
あなたのお店の近くにマクドナルドがあったら、是非とも誘導看板などの商圏内告知活動を観察してみて下さいね。彼らの考え方や行動は役に立ちますよ。今はチョット苦戦していますけどね。
では次回をお楽しみに。