株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ 取締役社長榎本篤史
2016-06-09 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ 取締役社長 榎本篤史

コンビニは実は飽和していない!?出店戦略のプロがその秘密を徹底解説

 このコラムのポイント

全国5万店以上にもなるコンビニチェーン。日本ではすでに飽和しているのでは?という噂もたつコンビニ業界ですが、まだまだ出店余力を残しているといえるのです。 特定エリアの人口とコンビニ出店数のグラフを表しながら、コンビニがまだ飽和していない理由について経営コンサルタントの榎本篤史氏が解説します。

フランチャイズWEBリポート編集部


飲食業界も脅威に感じる「コンビニの出店戦略」

前回まで一般論として、店舗売上を左右する要因についてお話し致しました。

店舗の売上を左右する要因として、最も影響が大きいのが、地域のマーケット規模です。
加えて、競合との立地の優劣によって、店舗の売上は決まります。

今回は、全国に約5万5千店あるコンビニエンスストアに注目して、その出店戦略について考察したいと思います。
全国にコンビニエンスストアが約5万5千店あると聞いて、皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか?

まだまだ少ない?既に飽和状態だ?

コンビニエンスストアは業界の変化(進化)がとても速く、新しいチャレンジをスピーディーに展開する機動力があります。そのため、同じ小売業だけでなく、飲食業界にとっても大きな脅威となっています。

コンビニ各社の異業種を取り込む動き

かつてコンビニエンスストアは5万店が飽和水準であるといわれていました。

現在は既にそのレベルを超えていますが、上位三社はいずれも1,000店を超える出店計画を立てており、各社出店意欲は旺盛です。コンビニ業界では近年、コーヒーやドーナツなど利益率が高い商品をレジ近くに配置する動きが目立ちます。

また、新しい客層を取り込む為、ドラッグストアと融合した店舗の出店も相次いでいます。新たな機能を加えることで、既存顧客の単価アップにつなげ、成長を続けています。

セブン-イレブンは人口が多い地域に集中的に出店している

コンビニエンスストア人口と出店数(株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ調べ)

上のグラフは東京都におけるコンビニ上位三社の出店状況を示しています。縦軸が店舗数、横軸が人口量です。

このグラフをみると、セブンイレブンは人口の多い地域に着実に店舗を出店していることがわかります。このように、ナンバーワン企業は出店に関しても原理原則に則った意思決定を行っていることが伺えます。

出店立地だけで全てを語ることはできませんが、この点だけでもナンバーワン企業の徹底力を垣間見ることができます。

そうした中、メディアでよく取り上げられるのが「コンビニ1店舗当たり人口が3,000人を割り込んだ」という話題です。

その背景には、1店舗当たり人口が3,000人を切った時点からコンビニ業界の再編・淘汰が始まったとされるアメリカの事例があり、日本でもコンビニ飽和説の根拠の1つになってきました。

1店舗当たり人口は、その多くが都道府県レベルの大枠で算出され、メディアの報道もこれらの数値に基づいています。しかし、細かく分析してみると、大枠とは異なる実態が浮かび上がってきます。

コンビニエンスストア1店舗当り人口

まだまだコンビニは飽和していない!東京と大阪の出店余力があるエリア

上の図は、東京都のコンビニ店舗分布と各市区町村の昼夜間人口をもとに算出した出店余力のイメージです。東京都は、大枠では飽和状態といわれていますが、細分化すると東村山市、日野市、多摩市、町田市、あきる野市は、まだ余力があるといえます。

逆に港区、品川区、新宿区などは、人口量が東京都でもトップクラスのエリアであり、各企業が数多く出店しているので、余力はあまりないといえます。そこでこうしたエリアでは、立地や商品構成など他社と差別化できる要素が重要になってきます。

一方、大阪府の1店舗当たり人口の平均は2,358人(夜間人口)と、東京都の1,828人(夜間人口)を超えており、東京都よりも出店余力があるといえます。

CVS1店舗当り人口

上の図は、東京都と同じ方法で算出した大阪府出店余力のイメージです。

大阪府の各市区町村の昼夜間人口の平均は約25万人であり、人口が25万人以上で出店余力が平均を超えているエリアとしては堺市南区、高槻市、大阪市城東区、枚方市、大阪市生野区、吹田市が挙げられます。

出店戦略を策定する際には、大枠の数値を把握することも大事ですが、さらに細分化して数値化やイメージ化を図ることで、より確度の高い戦略の策定が可能になります。マクロとミクロの両方を兼ね備えた複眼的な視点は、フランチャイズ本部だけでなく、すべてのフランチャイズオーナーに求められます。

株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ 取締役社長 榎本篤史

2003年ディー・アイ・コンサルタンツ入社。小売業、外食、サービス業、生活関連サービス・娯楽業など、流通全般の成長支援プロジェクトに参画。クライアント企業との協働作業により、戦略の立案および実行を支援。クライアント企業との長期的な信頼関係の構築を重視している。2014年より現職。