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2017-02-19 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
1回叱ったら何回誉めれば良いの?「叱る」が「激励」に変わる信頼関係をつくる方法
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このコラムのポイント
街頭調査などで「あなたの頼れる上司はどんな人ですか?」という質問に、多くの人が「きちんと話を聞いてくれる」「ここぞ!という時に適切なアドバイスをくれる」と回答してるのを耳にします。とは言え、相手ときちんと話をしたり、適切なアドバイスを受ける為には、相手に頼りたいと思われる信頼関係が不可欠です。今回のコラムでは、「叱る」と「誉める」をキーワードに、上司と部下が対話し信頼関係を深める方法について知ることができます。
フランチャイズWEBリポート編集部
マクドナルド時代の上司からのアドバイス
「部下を叱るには、その3倍は誉めておかないとダメだよ」
これは、昔々、私がマクドナルドで店長をしていたときに上司からいただいたアドバイスです。一般的にもよく言われていることですね。
上司によるお叱りは、部下に大きなダメージを与えるので、3回ほど誉めないと落ち込んでしまうよ、とのアドバイスだったようです。
この頃の私は、部下のミスや間違いを見つけるとすぐに叱る、ガミガミタイプの店長でした。つまり、誉めるよりも叱る量の方が圧倒的に多い、うるさい型の店長でした。
部下達は、いつも私に叱られて落ち込んでいたことでしょう。
その上、誉めることなどほとんどしなかったので、きっと部下達は私と仕事をするのがいやだったでしょうね。
部下を誉められない理由、招く悪循環
当時の私は、部下を誉めて伸ばすと言うよりも、問題点を指摘し叱って改善させる方が効果的だと考えていたのです。
そのため、誉めるということ自体に強い疑問があったのです。
「何度も誉めたりしたら何か裏があるように思われる… だから誉めない」
「誉めてばかりいると、部下の気持ちが緩んでしまうに違いない… だから誉めない」
と、こんな風に考えていました。
確かに、誉めれば『やる気アップ効果』や『お叱りのダメージ軽減効果』があるでしょう。
しかし、だからと言って、誉めることに抵抗を感じたまま中途半端な誉め方をしていたのでは、部下からその下心を見透かされたり、部下の気持ちが緩んでしまったりするでしょうね。
一方で、『叱る』という指導方法も、その効果には限界があります。
叱ってばかりいては長期的な部下の成長には繋がりません。
現に叱り続けてしまったことで、私の期待とは裏腹に、部下はドンドン萎縮し、かえってミスが増えるという悪循環に陥っていました。
「叱り」のマイナスインパクトを軽減する
私は悩みました。
叱るのも、誉めるのも上手く行かない… もっと叱るか?
いやいや、それじゃあ部下達はもっと萎縮してしまう…
どうしようか…もっと誉めるか?
それしかなさそうだ…
よし、3回では無く、もっと誉めまくってやろう!
自分の誉めるスキルが未熟ならば、回数でカバーしてやろう!
これが「1回叱ったら6回誉めよう」という法則の発見のキッカケとなったプロセスです。
私は、部下が私に誉められることで、やる気を出し主体的に行動するまで誉めまくろうと考えたのです。
中途半端に3回程度では無く、もっとたくさん誉めまくろうと考えたのです。
上司に叱られるということは、部下にとっては、非常にインパクトが大きいダメージです。
ですので、3回くらい誉めても、簡単にはリカバリーはできません。
もちろん、1回だけ誉められても、少しは嬉しいでしょう。
なので、3回くらい誉められると、叱られた後でも、それ相応に嬉しくなるのはわかります。
しかし、3回誉められても、叱られた1回のインパクトが大きかったら、そのマイナスインパクトはなかなかゼロにはなりません。
当時の私の『叱り』のマイナスインパクトはかなり強かったようですし、逆に『誉める』のプラスインパクトは、まだ小さい方でしたから、3回程度では不十分だったのです。
さらに「叱る」という方法にもひと工夫をすることにしました。
ガミガミ叱るかわりに、「自分で気づかせる」そして「考えさせる」ことで、自分で答えを出す「問いかけ」を取り入れるようにしたのです。
これにより、叱るマイナスインパクトの軽減を目論んだのです。
叱りが「激励」に転じる瞬間
まあ、まだまだ当時はコーチングレベルの「問いかけ」ではなかったので、部下にとっては「叱られた」という印象の方が強かったかも知れませんが…
ともあれ、私は
・誉める数を増やしてプラスインパクトを増やそう作戦
・叱るのを問いかけに変えてマイナスインパクトを減らそう作戦
この2つを進めることにしたのです。
ありがたいことに、この2つの作戦は、私にある研究課題を与えてくれました。
私は、この作戦により「部下に叱ったり、問いかけたりしたあと何回誉めるとリカバリーするか?さらに何回で主体的に行動し始めるか?」について観察と研究を進めたのです。
その結果発見したのが、拙著「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」(同文舘出版)にも書かせていただいた「1回叱ったら6回誉めよう」という法則なのです。
部下達は、私が一度叱っても、その後「6回誉めれば」そのプラスインパクトで、叱りのマイナスインパクトをゼロレベルまで戻した上に、誉められた喜びをエネルギーにして主体的に行動を始めました。
さらに「たとえ再び叱られても、それを『期待』と感じるようになる」ということもわかってきたのです。
つまり、6回も誉めていると、1回叱られても、その時の部下の反応は「叱ってくださって、ありがとうございます」になるのです。
面白いでしょ?
しっかりと誉めることが、強い信頼関係を築く
普段からしっかり誉め続けることで、部下は、叱られているのに嬉しくなるのです。
これは、『誉めること』つまり『認めること』により、上司と部下の間に強い信頼関係が生まれたことによるものだと考えています。
信頼関係が強く結ばれると、部下は常に「自分は認められ、期待されている」と感じるようになります。だから、1回叱られても「このお叱りは期待の裏返し」と解釈するようになるのです。だから、逆に嬉しくなるのです。
この法則を発見してから、私は、誉めることの方が圧倒的に増えるようになりました。
今や、10対1、いや20対1くらいで誉める方が多いと自信を持って言えます。
さらに、その1回の叱りも「部下が嬉しくなるように」叱れるようになったと思っています。
さて、いかがでしょうか?
一度だまされたと思って「1回叱ったら 6回誉めて」みませんか?
きっと、面白い現象を体験することになると思いますよ。
次回は「任せた部下のミスは上司が責任持って謝ろう」というテーマでお話しします。お楽しみに!
- 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)