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2017-05-28 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
丸投げ・口出し厳禁!仕事を任せられる部下の育てる極意は『見守る』こと
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このコラムのポイント
手元の仕事は山の如し、他に任せるあてもなし…うちの部下は何故いつまで経っても使えるようにならないのかとお悩みの方へ。今回のコラムでは、仕事を任せられる部下を育てていくために、上司が何を意識し行動すべきかについて知る事ができます。
フランチャイズWEBリポート編集部
「仕事を任せる」とは何か、正しく認識する
「部下を育てるために任せるということは、ただ単に『任せればいい』ということでは無いんですね」
私のコンサルティング先のある店長が、私にこう言いました。
彼は、「任せることが育てること」と、何かの本で読み、それをそのまま素直に実行していたのでした。
しかし、任された部下はミスをしたり、自己判断でトラブルになったりして、彼が思うような育ち方をしてくれないことに少々いらだちを覚えていたそうです。
そんな時に、私が行った「かつて自分の上司が自分をどの様に育てて下さったのかを振り返る研修」を受講し、よくよく考えてみれば、上司もただ単に任せてくれたのではなく、その前の準備やゴール設定、任せられている中でのフォローアップ、その都度都度のフィードバックなど、ずっと近くで見守って下さっていたことに気がついたのです。
「“任せる”ことと“放任する”とは同じではない」
「“放任する”とは“丸投げする”ことである」
「“丸投げ”をしても部下は育たない」
私自身も昔、上司から常にこの『任せる』と『放任する』の違いについて口うるさく厳しく指導して頂きました。
部下の成長を期待し、気にかけていることを伝える
世の多くの上司は、「任せないといけない」と思って、『仕事を任せる』のですが、その前後の大切なポイントが抜けているのです。
なので、トラブルが起きてからてんやわんやしたり、それが部下の自信を失わせたり、間違った方法を身に付けてしまったり、挙げ句は、自分が任せたのにもかかわらず、部下を叱ってしまうのです。ひどいですよね。
一方で、「部下を育てることに長けている上司」は、決して『放任』はしません。
一見突き放しているように見えても、必ず柱の陰から見ているのです。
このコラムの元になっている拙著「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」(同文舘出版)の4章の最後に登場する「十二指腸潰瘍になって倒れてしまった店長」も、自宅静養中にもかかわらず、店の近くから店の様子をうかがっていたことがありました。
もちろん、病気の身体を押して、そこまですることなど私は奨励しません。しかし、彼は、自分の体調のせいで否応なく部下に店を任せることになったことを申し訳なく思い、何度も店に行ったのです。しかし、スタッフ達は、頑として店長を店に入れませんでした。なので、店長は、仕方なく、店の前のベンチに座って店の様子を見ていたのです。
スタッフ達は、店長の体調を心配しつつも、そんな店長の姿勢に強く胸を打たれ、ますますがんばったのでした。
そして、彼が時折見せる「それで良いんだよ」という表情に、多いに励まされたのでした。
「任せる」とは、相手を信頼し、達成までを『見守る』こと
部下に「仕事を任せる」とは、どういうことなのでしょうか?
多くの上司は、部下にただ単純に仕事を丸投げし、無責任に放任をしているだけなのです。
悲しいことにそう言う上司は、部下が任された仕事でミスやトラブルを起こすと、ガミガミ叱ります。そして、部下の自信を奪い取っていくのです。
逆に、細かく細かく関与をする上司もいます。
まるで、部下の仕事は全て自分のきめ細かい指導があったからこそ出来たんだと、その上の上司にアピールしているような上司もいます。
当の部下は、そんなことをわざわざ指導されなくてもちゃんと出来るのに、自分の上司は誰に向かって仕事をしているんだろうという不信感が生まれ、同時にテンションが下がってしまうのです。
丸投げも、細かすぎる関与もどちらも、『任せる』ではありません。
『任せる』とは、そういうことではありません。
『任せる』とは、「見守る」ことなのです。
「見守る」のですから目を離してはいけません。四六時中でなくても良いですがそのプロセスはよく見ておく必要があります。
『見守る』とは「横について手取り足取り指示をすること」でもありません。細かすぎる関与は部下にとっては「信頼されていない」としか感じないのです。
『見守る』とは、文字通り「見ることで守る」ことです。
決して、監視したり、横やりを入れたり、制限したり、誘導したりすることでもありません。
時には、経験として必要ならば、失敗を「見守る」こともまた有りなのです。
その結果、部下は、上司の「見守り」を感じ、自分の『成長』を実感し、第4ステージ(従業員満足6ステージの4番目 ※詳しくは、前出の拙著を参照下さい)の上にしっかりと立つことが出来るようになります。
そんな彼らを見たら、きっとあなたは涙が出るくらい嬉しい気持ちになりますよ。
さあ、部下に「仕事を任せ」ましょう。
そして、責任を持って「見守り」ましょう。
次回は「自分のことを知りたかったら自分以外の人に自分のことを聴こう」というテーマでお話しします。お楽しみに!
- 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)