(社)日本フランチャイズチェーン協会 前専務理事 木村 知行 氏
木村知行(きむら ともゆき)氏プロフィール
昭和22年 神奈川県生まれ (株)西友ストア、(株)ファミリーマートを経て 平成21年5月 (社)日本フランチャイズチェーン協会 専務理事就任
社団法人日本フランチャイズチェーン協会という存在
皆さんはフランチャイズチェーンに加盟を検討する際、本部の何を重視し、チェーンの何を比較検討の対象とするだろうか。
フランチャイズは成功を買うビジネスだと言われる。
新規に開業することに比べ、フランチャイズに加盟しての開業は成功確率が高いと言われるが、それはフランチャイズ展開している本部は既に、過去の一定期間内に失敗あるいは成功を経験しており、その課程でさまざまなノウハウを蓄積してきているはずであるからだ。開業希望者が犯すであろう失敗を事前に経験し成功を重ね、次の段階としてそれら成功体験をパッケージ化したものが、フランチャイズパッケージであり、加盟希望者はいわば成功という商品を購入しているのだ。
それ故に、一方でフランチャイズは時間を買うビジネスだとも言われたりする。フランチャイズ本部が長い時間を掛けて繰り返してきた、失敗と成功に要した時間を買うのである。
しかし、当然のことながらフランチャイズといえども100%の成功を常にもたらしてくれるわけではない。逆にさまざまな問題が本部と加盟店の間に生じていることも過去を振り返ってみると事実として存在する。
フランチャイズの成功は、フランチャイズパッケージの販売、購入だけで終わるわけではない。本部と加盟店双方のたゆまざる努力によってもたらされるものだが、前提として本部には可能な限りの正確な情報開示が求められる。
そうでなければ、加盟希望者がたとえ何を重視しようとも、比較や検討をすることが不可能になってしまうからだ。
色あせない倫理綱領
社団法人日本フランチャイズチェーン協会(以下JFA)では、その倫理綱領の第1に『経験と実績による裏付け』というタイトルで、「フランチャイザーが、フランチャイジーに対価を得て提供する商品・役務、経営のノウハウは、すべて、過去の経験及び実績によって裏付けられたものとする。」と謳っている。
つまり、実績のない嘘をついて加盟店を募るのはダメだということだ。
倫理綱領の第2では、『正確かつ十分な情報提供』というタイトルを掲げ、「フランチャイザーは、フランチャイジーの募集にあたって、正確な情報の提供を行うものとし、誇大な広告や不当な表示をしない。」と謳っている。
つまりは、加盟希望者に対して正確な情報を提供しなさい、嘘はダメだということだ。
JFAではこの二つを含めて、全部で9つの綱領を設けているが、その1番目と2番目はこのように情報開示、つまりディスクロージャーに関するものであるというのは興味深い。
だが、この正確な情報開示がなければ、冒頭に述べた、加盟の際に何を重視し、何を比較検討するのかということが全くできなくなってしまうのだから、フランチャイズビジネスにおいていかに情報開示が重要であるかは疑問の余地がないところだろう。
日本フランチャイズチェーン協会は、今から37年前、当時の通商産業省(現・経済産業省)の認可を受けて設立された。
その経緯はどうだったのだろうか。推測の域を出るものではないが、その当時、国としてフランチャイズやフランチャイズシステムに大いなる期待を抱いていたのではないか。
成功や時間を買うビジネスがうまく機能すれば、日本の流通業は効率化し、生産性を上げ、新たな雇用を創出してくれるのではないかという期待があったのではないか。
そして、このようなフランチャイズシステムの将来性に注目はしつつも、一方で当時から存在したであろうさまざまな問題も解決していかなければならなかったに違いない。
強力であればあるほど制御しコントロールしていかなければさまざまな問題を起こしかねないのだ。
37年前というと、もう一昔も二昔も前のような気がするが、その時に定められた綱領の妥当性が全く揺らいではいないことには妙な感慨を覚える。
今回はフランチャイズ本部以外のCEOリポート
このコラムはCEOリポートというタイトルの通り、いままで様々なフランチャイズ本部の代表者にインタビューを試みてきた。しかしながら今回はフランチャイズ本部ではなく、日本フランチャイズ協会という業界団体トップへのインタビューだ。
JFAの専務理事という職は、CEOリポートというカテゴリからは外れてしまうが、上記に述べたように、長年にわたってフランチャイズ業界に影響力のある存在であり続けたことは間違いないし、そこの事務方トップであるということなので、インタビューを申し込んだ。
インタビューの中でも触れているが、厳密にはJFAのトップは会長の土方氏だが、事務方のトップとして事務全般を取り仕切っているのが協会専務理事である木村氏だ。
JFAの課題
私たち取材班が知りたかったのはフランチャイズ業界における今日的な課題やアップツーデートな話題ではなかった。そいういったことは他の機会に譲るとして、そもそもJFAという団体はどのような団体なのか、どのような活動をしているのかなどを事務方トップの木村氏に直接語ってもらうのが取材目的だった。
だが、冒頭、木村氏の口から出てきたのはJFAの課題というものだった。
それら課題を着任1年を過ぎた感想を交えて話してもらったことが今回のビデオのメイン部分となる。
結果的には、JFAが現在抱える課題を通じてJFAの活動や目的が見えてきたのは嬉しい誤算だった。
課題は代表的なものとして次の5つ。
それぞれムービーのタイトルにもなっているが、先ず一番目は相談センターの設置だ。
木村氏が専務理事に着任して早々に公取委の問題が発生したということだ。この問題はまだ最近のことなので読者の方も記憶に新しいのではないだろうか。その結果、フランチャイジーに対するケアーの意味も込めて相談センターの設置を行ったということだ。
二番目は、JFA自体の告知活動強化だ。
冗談めいた話で恐縮だが、日本人の多くの方にJFAという言葉を投げかけて、意味を尋ねたら最も多い回答は日本サッカー協会の略称と答えるだろう。
これは仕方がない。しかし問題なのはこれを業界関係者に尋ねたときにも同様の答えが返ってくるケースがある場合だ。これは困る。しかし、それもこれもJFA自体の告知活動が行われてこなかったが故ではないか、ではもっと告知していかなければ、として課題に挙がったのが2番目の課題だ。
最近連続して日経流通新聞(MJ)にJFA活動の告知広告のようなものが連続して掲載されたのでお気づきの読者もいるのではないだろうか。
そこでは、JFA会長の土方氏を初め、副会長なども紙面に登場し、盛んに業界の現状やJFAの活動について意見を述べておられた。一種の意見広告のような体裁で連載されていたのだ。 三番目は「会員サービスの充実」だ。幾ら国から認可された団体だとは言え、ではそこの会員にさえなっていればそれで会員は満足するのかというとそうとも言えない。やはり会費を払っている限りはそれなりの対価を求めようとするのは当然だろう。
そういった会員の方々へのサービスを充実していこうというのがこの三番目の課題だ。具体的には最近ホームページを一新し、その中で会員向けのサービスも充実させたとのことだが、トップページを見ただけでも今までとはずいぶんと違った印象であり、ぱっと見明るくなり、使いやすくなったという印象だ。
四番目は「組織の強化と再編」だ。これは外部からは分かりにくい部分ではあるが、上記1~3までの課題を遂行していくために組織自体に手を加え、より素早く課題が達成できるようにしたということのようだ。
最後の五番目はJFAの命題とも言えるものかも知れない。JFAは現在公益社団法人ではあるが、国の政策として、今後社団法人は一般社団法人と、公益社団法人に分かれていくのだそうだ。JFAとしては公益社団法人を目指すことを内外に明確にしているが、そのためには国の審査を通過しなければならない。そのタイムリミットが平成25年。
公益性を堅持し継続性というフランチャイズシステムの根幹を堅持していくためにも、JFAは公益社団法人を目指すと言うことだ。上記1-4の課題はまさしくそれを実現するための課題だと言えるのかもしれない。
JFAへの期待
今まで述べてきたようにJFAは公益性を重んじ、そのために綱領を定め、会員サービスに努め、新規の会員獲得にも力を入れてきた。
ムービーの中でも語っているが、JFAでは新規の会員を求めるにあたり、幾つかのボーダーを設けている。それによって会員の質を一定以上に保っているのだ。
では、協会の正会員であれば、絶対間違いなく加盟しても問題ないのだろうか。
当然だが、そうではないだろう。
JFAの会員を見ると、確かに他の本部に比べると歴史もあり、経営規模も大きいところが多いように思える。
その点では加盟の際にはある種の安心感もあるだろう。
一方で、安心感とは裏表の関係になってしまうのかもしれないが、逆に、新鮮さが失われ活力もあまり感じられない本部の存在にも気付かされる。
フランチャイズビジネスに参加しようという人間は安定をもとめつつも、失敗を最大限回避しながらも、最大限の成功を収めようとしている方が大半ではないだろうか。言うまでもないことだが、フランチャイズに加盟することは会社に就職することとは全く違う。フランチャイズ加盟という形の”独立”であることは間違いないのだから。
そこにはリスクがあると同時に成功の可能性がある。
木村氏もインタビュー中に述べているが、新しい会員の発掘もこれからのJFAの課題とも言えるだろう。しかし、課題達成のために倫理綱領を緩め、その基準に達していない本部まで会員にしてしまっては本末転倒である。
だが、可能な範囲でエネルギーに満ちあふれた、明日のニッポンを代表するような可能性を秘めた本部の獲得も目指してもらいたい。
日本経済はいまだ厳しい状況にあり、不況下においても着実に実績を伸ばしてきたフランチャイズ業界にもその暗い影を落としている。
そんな状況にあって、ボーダーは設けつつも会員は増やしていくには相当難しい操縦が求められるが、それもまた公益性と同時に明日の日本の活力を求められているJFAにはこなしていかなければならない課題なのだろう。
最近では、コンビニをはじめとした日本のフランチャイズチェーンの海外進出が本格化し始めた。これは米国生まれのフランチャイズシステムを長年にわたって日本国内で改良し発展させてきた結果だろう。その努力が今まさに海外展開という形で報われようとしている。その過程でJFAが果たした役割は決して小さくはないはずだ。
システムが発展するためには、透明性に溢れたフィールドが必要だからだ。それが担保されなければ健全な発展は望めない。
そういった意味で、今後もJFAのような公益性を重視した団体の存在はますます重要になってくるのではないだろうか。
[名 称] 社団法人 日本フランチャイズチェーン協会
[英文名称] Japan Franchise Association
所在地 〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目6番2号 第2秋山ビル1F
TEL 03-5777-8701 FAX 03-5777-8711
ホームページ http://www.jfa-fc.or.jp
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