このコラムのポイント
今回はアメリカのマクドナルドにまつわるお話。お店のキッチンではイラストや写真を駆使した作業手順書が使われており、実にわかりやすく誰でも理解しやすいフォーマットとなっている。多民族国家ならではの工夫。今、これからの日本ではこの発想を活かすべきでお店のオペレーションも変わってきます!
フランチャイズWEBリポート編集部
「これはわかりやすい!」
今から30年ほど前のお話です。
私は、勤めていたマクドナルドでアメリカに研修に行かせていただきました。
アメリカ到着後、現地のある店舗に入り、そこで実際にハンバーガーを作る実習を受けたのですが、その時に見た現地の作業手順書が非常にわかりやすかったことに、大いに驚かされたのです。
今回のコラムは、このわかりやすい作業手順書のお話です。
言葉の壁は越えられる!
アメリカの店舗と言えど同じマクドナルドですから、基本であるハンバーガーの作り方は全く同じなのですが、期間限定メニューやアメリカ特有のメニューなどは、当然ながら私は作り方を知りません。
そこで、現地のマネジャーやスタッフにその作り方を教わるのですが、私の英語力は低レベルですし、私に付いてくれたスタッフはメキシコ人。彼女も英語が上手く話せません。そこで、そのメニューの作業手順書を見ながら身振り手振りで作り方を教わったのですが、それが実にわかりやすかったのです。
彼女がやってくれたのは、極端に言えば、作業手順書のイラストを指さすだけ(笑)
そして、その通りに私が作業を行うと「オッケー」「グッジョブ」「ノーノーノー」と評価をしてくれるのです。
そのイラスト式作業手順書は、全てがイラストか写真で出来ており、言葉がほとんど、と言うか全くありませんでした。しかし、手順が全てイラスト化されているので、パッと見ただけでわかるのです。つまり、この手順書の通りに行うだけで、ハンバーガーを作ることが出来るので、言葉による説明などは不要なのです。
おかげで、困ったときはそのイラスト手順書を見れば良かったので、私はなんとか無事に自分の仕事をこなすことが出来ました。
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「誰にでも伝わる」を意識して
私たち日本人は、お互いのコミュニケーションを日本語で行う事に、何の疑問も持っていません。
最近はかなりグローバルになってきており、外国人スタッフも増えてきましたが、そんな彼らもその多くは、かなり流暢に日本語を話してくれます。
そのため、作業指示や教育のほとんどを日本語で行っているのです。しかも、それに加えて日本語を文字で伝えようとする習慣もあるのです。
しかし、その当時のアメリカでは(今も変わらないようですが)、アメリカにいるにもかかわらず、英語が通じないことが多々あるのです。そのお店も店長と2名の社員は英語を話せますが、アルバイトスタッフは、中国系、韓国系、メキシコ系のスタッフばかりです。共通言語は英語なのですが、細かく深い会話は出来ないのです。
また、ある程度の英語は理解出来ても、細かく書かれたテキストなどは、彼らもよく分からないのです。こうなると日本人ならもうパニックですが、アメリカではごく普通のことらしいのです。しかし、彼らもコミュニケーションを取らないと仕事になりません。
そこで、そんな彼らが、スムーズにコミュニケーションをとり、作業手順をきちんと教育するために工夫していたのが、「イラストや写真を使った作業手順書」なのです。
なので、英語が苦手な日本人の私でも難なく作業をこなすことが出来たのです。
今からグローバル化に備えよう!
さて、この発想・・・
今の日本でも使えると思いませんか?
と言うか、今だからこそこの発想を活用すべきなのです。
日本人は、どうも日本語という言葉、それをテキストで伝えるのがまだまだ好きなようです。最近は、SNSのスタンプや写真が多用されるようになってきましたが、作業手順書やマニュアルになると、まだまだ、文字、テキストがその大半を占めています。
これでは、外国人スタッフを戦力にするには手間と時間がかかってしまいます。さらに教える側にも、教えられる側にも大きなストレスがかかってしまいます。しかし、イラスト式の作業手順書を使えば、いとも簡単に言葉のギャップを埋めることが出来るのです。
それにより、早く確実に幅広い人材を戦力化できますし、スタッフにも余裕が出来て、よりレベルの高い接客や調理などの作業が出来るようになるのです。
イラストを描くのが苦手ならば、作業手順の流れを写真で撮ってしまうのも手です。
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まとめ
繰り返しになりますが、日本人は、日本語という言葉と文字で全てを伝えたいと考えすぎです。大切なことは、目的と手順を相手に正確に伝えることです。それには、写真、イラスト、グラフ、動画、などを活用すれば良いのです。
わかりやすい作業手順書を作成し、それを活用することで、新人スタッフの育成・外国人スタッフの早期戦力化を実現させて、「従業員満足度」と「顧客満足度」が双方に高いお店を作ることができるのです。
編集部より
今回はフランチャイズ発祥の地アメリカ、その代表格でもあるマクドナルドの店舗オペレーションのお話でした。
言語も文化も違う人々が集まる多国籍国家ならではの工夫が伺えますね。国内でも現在、海外籍の方の雇用対応ができるかできないかでが、お店の運営が左右されるといえます。
フランチャイズのオーナーは”人材管理”がメイン業務の一つ。本部からはオペレーションの大まかなところは支援があるかもしれませんが、日々のスタッフ教育となると、やはり、店長、オーナーの仕事となります。
人材教育を考えるうえでも、また、今後さらに増加が見込めるインバウンド向けにも、このマクドナルドの作業手順書は参考にできますね。