よくわかる!フランチャイズ経営のメリットと加盟の注意点
フランチャイズにはさまざまな業種が存在し、有名な店舗も「実はフランチャイズだった」ということも珍しくありません。フランチャイズとは、フランチャイズ本部(又はフランチャイザー)が、加盟者(フランチャイジー)に対し、商号や商標、商品やサービスの販売権、営業ノウハウを提供する代わりに、ロイヤリティを受け取る契約のことです。
失敗が少ないと言われるフランチャイズビジネスに関心があるなら、基礎的なことだけでなく、契約をする上での注意点や、どのような人が加盟しているのかについて知っておきましょう。
フランチャイズについての基礎知識
フランチャイズとは?
フランチャイズとは、フランチャイズ本部と加盟店が契約をして、加盟店がフランチャイズ本部から指導やサポートを受けたり、フランチャイズ本部の知名度を利用して商品の販売ができたりする仕組みのことです。
フランチャイズ本部をフランチャイザー、加盟店をフランチャイジーと呼びます。フランチャイズ契約の内容はフランチャイズ本部によってそれぞれ詳細が異なりますが、加盟店がフランチャイズ本部に商標使用料などが含まれた対価(ロイヤリティ)を支払うのが一般的です。
フランチャイズについてよく知らないから不安!
初めてフランチャイズ契約を結ぶ場合、不安なことやわからないことが多くあるのは当然ですよね。しかし、フランチャイズ契約の前には、無料の事業説明会や実店舗での研修、個別相談などをフランチャイズ本部が実施している場合が多いです。契約内容や開業までの流れなどを確認できる機会なので、契約前に疑問点を解決しておくといいでしょう。
フランチャイズを3つのタイプに分類
千差万別あるフランチャイズですが、開業の仕方に注目するとビジネス・フォーマット型、ターンキー型、コンバージョン型の3種類に分類することができます。
ビジネス・フォーマット型フランチャイズ
ビジネス・フォーマット型フランチャイズは、フランチャイズ本部からレシピや商品、ノウハウなどのビジネス・フォーマットを受けて開業する方式です。店舗が必要な場合は、自分で用意しなければいけません。
ターンキー型フランチャイズ
フランチャイズ本部が店舗まで用意してくれるのが、ターンキー型フランチャイズです。ターンキーとは、「鍵を回せば」という意味です。フランチャイズ本部が開業の準備をすべてやってくれるので、加盟店のオーナーは鍵を開けて店舗に入りさえすればすぐに営業を始めることができます。
コンバージョン型フランチャイズ
もともとフランチャイズ本部と同業の事業を行っていて、フランチャイズ本部が持っている商標やブランドイメージを活用したい場合には、コンバージョン型フランチャイズという方式があります。コンバージョンは、転換、変換といった意味です。不動産業やホテル業に多く見られ、本部のブランド力を利用して客数を増やすことができるメリットがあります。
フランチャイズはさまざまな業種に存在しますが、飲食店やコンビニなどの小売業にとくに多いのが特徴です。
フランチャイズ加盟店と直営店の違い
ブランドを統一する方法のチェーン店ですが、同じブランドでも直営店と加盟店があります。直営店と加盟店の違いを知っておくと、加盟店のメリットを理解しやすくなります。
レギュラーチェーン
レギュラーチェーンとは、本部が「直で営む」直営店のことです。本部が出資をして、経営そのものを行っており、店舗で働く従業員も、本部の社員です。
フランチャイズチェーン
これに対してフランチャイズチェーンは、フランチャイズ契約を結んだ加盟店のことです。本部とは異なる法人や個人事業主が店の経営を行い、従業員を雇用するのも本部ではなく加盟店の経営者です。
フランチャイズに加盟するメリット
業界や経営について未経験でも安心
商売の経験がなくても、研修制度でノウハウを教えてもらえるのも大きなメリットです。
開業当初から、フランチャイズ本部と同じ商品やレシピ、サービスを扱うことができ、ブランド力のある商標を利用できるので、集客の面でも期待できます。さらに、開店したあとも経営のことで悩んだら本部が相談にのってくれるので、1人ではじめるよりも心細くありません。
気に入ったカフェ、レストランなど、憧れの店の加盟店オーナーにいきなりなれることも、フランチャイジーの大きなメリットです。
ゼロから始めるよりも資金を抑えて開業できる
フランチャイジー(加盟店)のメリットとして、建物や設備の一部を本部が負担してくれることもあるため、ゼロから自分で開業するよりも少ない出資金ではじめることが開店できるという点が挙げられます。
もちろん、フランチャイズ本部との契約によって必要な開業資金は変わってきますが、例えば、自分の土地を店舗として活用できるのか、賃貸にするのか、といった違いがあるでしょう。
しかし、いずれにせよフランチャイズに加盟すれば、自分でゼロから開業するよりも低い予算で、リスクを抑えることが可能となります。
フランチャイズに加盟するデメリット
ブランドイメージが傷つけば売上低下も考えられる
本部のブランド力を利用できるということはフランチャイズ加盟の大きなメリットだといえます。その反面、どこか1つの店舗で食中毒や従業員の不祥事などが起こり、ブランド全体のイメージが傷ついた場合、あおりを受けて売上が低下する恐れがあるということもまた認識しておかなくてはなりません。
このように、トラブルが発生した際の本部の対応や努力次第では、加盟店全体の店舗経営が左右されるという点に注意が必要です。
自由度が低く独自性を出しにくい
フランチャイズというビジネスモデルにおいて、経営の効率化とブランドイメージの保持は重要になります。これらを達成するために、経営や店舗運営に関するさまざまな内容がマニュアル化されているため、自由度が低く個々の意見が通りにくいという点もデメリットの一つです。
フランチャイズ本部によって度合いは違いますが、ブランドイメージや顧客の満足度を高めるために、仕入れ先や経営方針などについて本部に従う必要があるということを、加盟前に認識しておく必要があります。
どういう人がフランチャイズに加盟しているのか
個人として加盟するパターン
業界未経験でもできるのがフランチャイズの大きな特徴です。そのため、加盟する人の年齢層も20代から70代までと、さまざまな年齢の人がいます。また、日本ではもともとサラリーマンの割合が多いため、脱サラをしてフランチャイズに加盟する人の割合も多くなっています。なかには、転職を考えているときにフランチャイズを知り、興味を持ったという人もいるほどです。
他には、自分が憧れていた店を出店したいという動機でフランチャイズに加盟した人や、将来自分の店を出店するために店舗経営を学びたいという理由でフランチャイズに加盟した人もいます。
変わったところでは、夫婦で一緒にできる仕事としてフランチャイズを選んだ人や、フランチャイズ店でアルバイトをしていて、働いた店が閉店するタイミングで、その店舗を引き継ぐ形で本部とフランチャイズ契約をした人もいます。
法人として加盟パターン
フランチャイズは個人だけではなく、法人も加盟することができます。法人の場合、異業種での多角化を考えて、新規事業のためフランチャイズへの加盟を検討するケースが多いです。異業種なのでノウハウがないため、しっかりと指導をしてくれるフランチャイズを選択します。
また、離職者が多いことに悩んでいる企業では、離職者を減らすためにフランチャイズに加盟するケースもあります。フランチャイズ店を多店舗経営していけば店長などのポストが増え、社員のモチベーション上昇を期待することができます。
飲食店を経営する企業では、メニュー開発や人材教育の時間を割くのが難しいという理由で、フランチャイズに加盟したケースがあります。フランチャイズ本部の力を借りることで、経営に集中することができるのです。
フランチャイズ契約をする上での注意点
Q. 売上に対して見込める利益を知るために、ロイヤリティの算定方法などを把握しておこう
フランチャイズ契約をすると、一般的にフランチャイズ本部の指導やサポートを受けたり、商標を使用して営業をする権利を得ることができますが、かわりに毎月のロイヤリティを支払う義務が生まれます。そのため、契約をするときにはロイヤリティの計算方法をしっかりと確認することが大切です。このときに、実際にどれくらいの利益が見込めるかを計算しておくといいでしょう。
Q. 加盟後のトラブルも想定して、損害補償金や違約金の有無を確認しよう
損害賠償金や、中途解約などによる違約金は、加盟店の違反行為を抑止し、フランチャイズのブランドイメージを守るために必要なものです。
金額が低く設定されている方が、一見易しいように感じますが、損害賠償金や違約金が高いほうが、ほかの加盟店がルールを守って営業すると期待できます。逆に極端に安く設定されている場合や、そもそも損害賠償金や違約金の規定がない場合は、本部に理由を聞いたほうがいいでしょう。 また多くの場合、契約が終了しても協業避止などの制約があります。その内容についても確認しておきましょう。
Q. 戻ってくるお金、戻ってこないお金を確認しておこう
加盟金や保証金の返還、損害補償金や違約金についてしっかり確認しましょう。
加盟金は、ほとんどの場合、契約書に「返還しない」と明記されています。フランチャイズ契約が終了しても返還されないことが一般的なのです。しかし、本部の都合で開業できない場合にどうなるかなど、しっかり聞いておきましょう。
加盟金が返還されないものであるのに対し、保証金は返還されるべきものです。保証金とは、加盟店の未払いなどに備えて本部に支払っている預り金です。契約終了時には、本部は加盟店に返還する義務があります。保証金の返還方法や返還時期は、契約時に確認しておくと安心です。
Q. 加盟したから自由ではありません。ブランドの象徴となる商標や称号の使用条件を確認しよう
フランチャイズ本部が持つブランドイメージやマークなどの商標が使用できることは、フランチャイズに加盟する最大の理由のひとつです。しかし、一般的にフランチャイズ本部は、ブランドイメージを損なわないために商標の使用条件を定めています。商標の不正利用は大きな問題になるため、契約前にしっかりと商標の使用許諾の範囲についても確認する必要があります。
Q. 提示された収益シミュレーションを自身が納得するまで確認しよう
収益シミュレーションの根拠についても確認が必要です。とくに、利益予想については、事業計画に直接関わることなので、自分でも季節ごとの変動などさまざまなケースで出すことをおすすめします。
Q. 仕入れルートの指定があるのか、また仕入れの条件が妥当な内容なのかも確認しよう
多くの場合、フランチャイズ本部はブランドイメージや商品の品質を守るために、加盟店が仕入れる商品や材料、備品などを指定します。しかし、仕入れ数量の強制など不公平な契約になっていないか、しっかり確認しましょう。
Q. 契約期間や更新の方法を確認しよう。更新費用がかかる場合も
フランチャイズの契約期間は契約をした日からなのか、店舗のオープン日からなのか。契約期間満了後の更新は自動更新なのか、更新手続きが必要なのか。また、契約更新の際に更新料が発生するのか、発生する場合はいくら必要なのか。契約前に必ず確認しておきましょう。
Q. テリトリー制導入について確認しよう
テリトリー制とは、加盟店の半径5km以内など、地域を特定して他の加盟店の出店を制限する制度のことです。テリトリー制には主に4つの種類があります。
1つ目は「クローズド・テリトリー」で、他の加盟店をテリトリー内に出店させないことを本部が承認するものです。 次に「オープン・テリトリー」では、テリトリー内に出す店舗の数に上限が設けられます。 3つ目は「優先的テリトリー」で、フランチャイズ本部が新たな店舗の出店を検討する際に、テリトリー内の加盟店へ優先的にアナウンスして出店権を与えるというものです。 最後の「期間限定テリトリー」では、開店から一定の期間はテリトリー内に他の加盟店を出店させないという取り決めが交わされます。
これらのテリトリー制が導入されることで経営の安定化が期待できますが、いずれにしても競合他社の出店によってシェアを奪われる可能性は少なからずあるという点には注意が必要でしょう。
Q. 法定開示書面がある場合は契約書の内容と比較しておこう
フランチャイズ契約を結ぶ前に法定開示書面を提示されていた場合、契約書の内容としっかり比較しておくことが大切です。契約書には法定開示書面に記載されていない文言が書かれていることがあります。契約を締結した後で内容が異なることに気付いたとしても、原則的には契約書の内容が有効となるので事前の確認が重要です。
Q. 「オープンアカウント」の仕組みをしっかり理解しよう
経営が赤字になったとき、自動的に本部から不足金が融資される場合があり、この仕組みを「オープンアカウント」といいます。「オープンアカウント」では金利が付されるため、その利率や仕組みについて事前に理解しておくことも重要なポイントです。
フランチャイズ加盟で失敗するケースとは?
ゼロから自分で開業する場合に比べて、フランチャイズは実証済みのビジネスモデルなので黒字になりやすいのは事実です。
しかし、加盟店にはロイヤリティを支払う義務があることや、フランチャイズで独立開業しても閉店してしまう人もいることなどから、「フランチャイズは儲からない」といったネガティブなイメージを持った人もいます。フランチャイズで失敗をしたオーナーは、本当にフランチャイズだから失敗をしたのでしょうか?よくある失敗例から、改善点を学んでみましょう。
契約書をよく読んでいない
フランチャイズで失敗をする加盟店オーナーの特徴として、契約書をよく読んでいないことがあげられます。本部が提示する収益シミュレーションを鵜呑みにし、明るい未来を夢見て開業してしまうのです。
しかし、実際には売上の変化や、廃棄ロスなどさまざまな問題があります。その結果、収益予想と実際の売上に誤差が生じ、経営が成り立たなくなってしまうのです。
フランチャイズ本部と加盟店は、事業者と消費者の関係ではないので、フランチャイズ本部からビジネス・フォーマットを買ったお客様ではありません。フランチャイズ契約は、事業者と事業者という対等なパートナーとして交わす契約ですので、契約は自己の責任において行わなければいけません。そのため契約内容をしっかりと把握するのは当然なのです。
店舗の立地や顧客の傾向なども、本部の話を信じるだけでなく、自分で現地に赴いて立地調査をおこなうなど、事実を把握して検討する必要があります。
フランチャイズ契約書の主な記載事項
フランチャイズ契約書には20項目以上の記載事項がありますが、主要事項としては以下のものがあります。
・契約の目的
・契約期間
・商標の使用許諾
・営業名および営業場所
・営業時間などの遵守事項
なお、業種や事業形態などによってフランチャイズ契約書の記載事項は多少異なるため、決まった書式はありません。
経営者としての自覚がない
フランチャイズ契約をすると、圧倒的なブランド力を味方につけることができます。しかしその事に安心して頼りすぎてしまうのも、失敗する人によく見られる傾向です。
フランチャイズ本部に依存してしまって、「言われたとおりにやっていれば大丈夫だろう」と、経営者としての努力を怠ってしまうと、成功することはできません。加盟店のオーナーは、フランチャイズ本部から雇われた店長ではないので、経営者であるという自覚をしっかり持ちましょう。スタッフの教育、現場の把握、傾向と対策など、工夫することはいくらでもあるはずです。
フランチャイズ加盟で成功する秘訣
フランチャイズで成功するためには、当然のことですがまず、契約内容をしっかり把握することが重要です。
次に、店舗型の場合は、これから開業しようとしている用途に立地が合っているかが重要になります。本部の話だけではなく、自分でしっかり考えて検討しましょう。
フランチャイズは確かに、成功しやすいビジネスモデルです。しかし、フランチャイズ契約をすれば必ず儲かるということではないのです。経営者としての努力が必要だということを、忘れてはいけません。フランチャイズの商標やノウハウは、こちらが有効に活用してやるのだという姿勢で望むことが大切です。
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